演出家伊坂幸太郎
この作品は私が読んだ伊坂幸太郎作品の2作目となります。初めて読んだ作品は『陽気なギャングが地球を廻す』だったのですが、演出などが非常に私の好みに合っており、他の作品も是非読みたいと思って手に取ったものが『アヒルと鴨のコインロッカー』でした。
この作品の特徴として、主人公が物語に途中参加する、という事が挙げられると思います。引っ越した先の隣人と、ペットショップの女性店員、そして今はもう亡くなってしまったもう1人の女性店員。現在と過去を軸に、主にこの3人の物語が語られます。そこに主人公が途中参加し、読者と共に客観的にその物語を見届ける。つまり、主人公は主人公でありながらその物語上では脇役に過ぎないのです。
また、伊坂幸太郎さんの物語の面白さは掃除機のような伏線回収だと思います。色々な所に伏線を張り、それを最後にまるで答え合わせをするかのように一気に回収する。読んでいてとてもスッキリするものがあります。
しかし、この作品ではそれとは少し違う気もします。一気に回収する時のスッキリさはあまり感じられませんでした。理由を考えてみると、読者が主人公以上に物語を知っているからではないかと思います。
先述した通り、物語に途中参加した主人公が読者と共に客観的に物語を見届けるのですが、それはあくまでも現在の話。過去は主人公より先に読者が覗いています。故に、伏線の合致は主人公より読者の方が早いのではないでしょうか。それなら伏線が一気に回収されるスッキリ感がなくても無理はありません。しかしそれが駄目だというわけではなく、このような演出や手法がとてもハマる作品だったので寧ろ良かったと思います。
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