東川篤哉『館島』レビュー
「館」へ! 高まる期待このミステリには奇妙な形の建物が出てくる。全体が六角形の角柱で、中央部に螺旋階段をそなえた別荘。天才建築家・十文字和臣のものであり、彼の死体が見つかった場所でもある。風変わりな建物が大金持ちの持ち家であり、その大金持ちの死に不審な点がある。関係者が集められ、その中には確執のありそうな家族と探偵がいる。そしてまた人が死ぬ。完璧におなじみのパターンだ。これはもう、「館」を舞台にした重厚なミステリに期待せざるをえない。と思いきや…だが、ひとたび本を開くと、そこに流れる空気は「重厚」と呼ぶべきものからは程遠いことに気づく。東川篤哉の他の作品に親しんだ人ならともかく、初めてこの作者の小説に触れた人であれば、舞台設定には一見そぐわないようにも思われるコミカルな文体に面食らうのではないだろうか。だって、変な形の建物で人が死んでいる。変な形の建物では人が死ぬのがミステリである。し...この感想を読む
3.53.5
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