きっかけがないまま一生を終える人たくさんもいる。でも、目に見えないものっていうのは、共通の出来事であっても、捉え方は違うのかもしれない。
杉下希美
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殺された夫婦に関わった者たちこの「Nのために」は、殺された野口夫妻の殺害現場にいた4人の取調べから始まる。従って話し言葉で始まるのだけれど、正直そこであまりよい予感がしなかった。というのも前回読んだ湊かなえ作品の「白ゆき姫殺人事件」がこのような始まり方で、ストーリーに引き込まれはしたもののラストの消化不良がひどかったからだ。またあんな訳のわからない終わり方はいやだなあと、一瞬後ろを確認しようかと思ったほどだった(さすがにそうはしなかったけれど)。結果読み始めて止めることはできず、ラストはあのような変わった終わり方ではなく、きちんとしたものだった。そして湊かなえらしいサスペンスと大どんでん返しを思い存分楽しめる作品でもあった。とはいえ、まるっきり楽しいストーリーではない。そこにも湊かなえらしいところだ。暗く重く、高校生のきらきらしているはずの愛情でさえどこかしら悲しく切ない不吉な印象を持...この感想を読む
杉下希美
ボロアパート「野バラの荘」の住人、西崎真人、杉下希美が台風の影響で床下浸水した時に知り合ったシーン。