いくら戦争で勝ったとはいえ、卑劣な暴力で服従させようとすれば、それは戦争の終わりを永遠になくしてしまうのだ
冠人
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伊坂光太郎ワールド時代が違ったり魔法使いが出てくるタイプではないのですが、ファンタジー小説だと言えるのではないでしょうか。小説は「欠伸が出る。人間からすれば・・・」と突然始まり、語り手が人間ではないことにまず驚きます。不思議な視点の小説が始まったと思っていると、「『ちょっと待ってほしいのだが』私はトムという猫に話しかけた」と、猫の回想話を「私」が聞いているという状況をやっと理解します。そこから、どうしてこのようになったのかという混乱を1つ1つ解決するために猫の話を読み進めていく私は、不思議に思いながらも耳を傾ける「私」と重なっていき、すっかり伊坂光太郎ワールドに引き込まれてしまいます。猫目線の話の展開猫の目線で摩訶不思議な世界の話が語られるため、そこの場で起こっていることを客観的な事実として受け止めることができます。猫目線の話の展開に慣れてきた頃に、話の中でネズミが猫に対して意見を主張す...この感想を読む
ラストのどんでん返しに次ぐどんでん返しで、納得させられるというか、ここに来てやっとスカッとする展開! とは思ったものの、そこにたどり着くまでの長いこと長いこと。丁寧な描写と言えば聞こえはいいが、いかんせん冗長的。こんなに長々書く必要があったのだろうか、なんてことを考えてしまう。伊坂幸太郎作品にしてはめずらしくファンタジーだし、性格描写は分かりやすいし、登場人物ひとりひとりに好感は持てるが、なんだか疲れたなぁ、と。トム君は良かったなー。主人公が帰ることに関しては、どうなんだろうな、と思う。共生していくのも十分アリじゃないのかなぁ。そこら辺の心の動きも丁寧だなぁと思うのだが。
ファンタジー長編だったんで、ちょっと苦手だな〜、思って読み始めましたが、後半あたりからどんどん話が展開していったので、結局は一気に読み終えてしまいました。現代からまぎれこんだ人間の視点、しゃべる猫トムの視点、さらに過去と現在などが入り交じって描かれており、途中途中に伏線がちりばめられています。後々、いろんな謎が解けていくにつれて、「あー、こういうことだったのね!」と感心することもしばしば。戦争がからんでいるけど、人が死ぬシーンもほとんどなく、ラストは「めでたしめでたし」でしめくくられているのも安心。ただ、登場人物(猫)の名前が馴染みにくかったです。号豪、医医雄、枇枇、クロロ、ギャロ、グレなど…東洋と西洋がごちゃごちゃになって、しっくりこなかったです。
冠人
国王の冠人が、敵対している国との戦争についての現状を述べ、国民を落ち着かせる場面