贖罪のあらすじ・作品解説
贖罪は、東京創元社より2009年6月15日に発行された、湊かなえによるミステリ小説である。 この作品は、穏やかな田舎町で起きた転校生の美少女の殺人事件をきっかけに、事件直前まで被害少女と共にいた4人の少女たちのその後の悲劇の人生と運命が語られた物語であり、各章ごとに語り手が変わる形で物語が進められいる。犯人に会ったとされる4人の少女たちは、殺された被害少女の母親から、犯人を見つけるか、納得できる償いをするよう求められ、犯人の見つからぬままに、「償い」への思いを背負いながらそれぞれの人生を歩んでいき、それぞれがさまざまな運命に遭遇していく。 2010年に、一般社団法人日本推理作家協会による第63回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門で候補作にあげられるなどの評価を得ている作品である。 さらに、2012年にはテレビドラマ化され、そのドラマが東京ドラマアウォード2012で優秀賞と演出賞を受賞したほか、ヴェネチア国際映画祭では正式招待作品として上映されるなど、注目の高い作品でもある。
贖罪の評価
贖罪の感想
罪の重さに比例する「贖罪」だったのだろうか?
最後まで犯人がわからない緊張感「贖罪」は、湊かなえによる3作目の作品。デビュー作の「告白」と同じように登場人物の台詞で物語が進行していく。第63回日本推理作家協会賞長編及び、連作短編編集部門の候補作となった作品です。作者である湊かなえは、ラジオドラマの脚本大賞で受賞した事もあり、台詞形式で進んで行く少し変わった小説となっています。当初、犯人はわからないものと思って読み進めて行くと、意外な展開から犯人像が浮かび上がっています。それは、子供たちを憎み殺人者とののしっていた、エリカの母親に関係する人物でした。これを最後まで、わからない状態描いているので、ぐいぐいと物語の中にひきこまれます。台詞での語り口調となっていますので、文章が苦手と感じる方におすすめです。犯人は母に恨みを持った人物、つまり母親のかつての交際相手、しかもエリカの父親だったのです。エリカの父親だったという事から、さらなる悲劇と...この感想を読む
言葉って怖い
『告白』と同様の、独白形式で話が進み、事件の全貌が見えてくる。この手法が物語全体の不気味さを増幅させている。田舎の少女4人が、都会からの転校生と友達になる。5人で遊んでいたある日、転校生の少女が殺害されてしまう。少女の母親は、犯人の証言ができない4人に対して脅迫まがいの言葉を投げかける。それによって、その後の4人の人生は苦しいものとなってしまった。複雑に絡み合った人間関係が凄い。事件の後遺症・投げかけられた言葉で苦しむ女性たち。大人になって起こる様々な出来事に、これらが絡み付いて離れない。彼女らの人生に関わる人物や、不幸な出来事の根底には、少女時代の忌まわしい体験が否応なくへばりついてくるのである。作者の得意とする(かどうかは知らないが)不気味なストーリーから目が離せなかった。読後感は意外と良かった。
墜ちろどこまでも。
人って結構短絡的に呪いを吐く、こともある。大きな事件。居合わせた美少女被害者と犯人と、女子4人。そんな女子4人に、その後ある人は言います。4人の人生を、それぞれに決定づけてしまうようなひどい言葉です。悲しい目に遭った人は何言っても良いんじゃないのに。全く人生って厄介ですね。色々と、忘れられなかったりしますもんね。はるか昔言われた適当な人の適当な言葉ですらそうなんだから、その時一番おっそろしい相手からのド渾身の言葉なんて、忘れるどころかそりゃ人生にもろに被さってくるってもんです。最早呪いです呪い。4人の人生。事件の真相。そのどこかに光を見出したい一心で読み進めました。でも不思議と裏腹に、よし墜ちろ4人+αどこまでも! って気持ちにもなる湊マジック。あらゆるエグい展開にも耐えられる、すこぶる元気な気持ちの時に読みたい作家さんです。