ブラックペアン1988のあらすじ・作品解説
ブラックペアン1988は、大人気小説チームバチスタの栄光を手がけた作家、海堂尊による5作目として、2007年に講談社から刊行された長編小説である。 医師として活躍する作者ならではの目線で医療問題に切り込む作品となっており、バチスタシリーズでお馴染みのキャラクターが数々登場、バチスタシリーズの主人公、田口医師が手術嫌いとなった原因も明らかとなっている。本作品の題名にもなる手術用器具ブラックペアンは、20年後の物語となるバチスタシリーズにも重要な関わりを持ち、本作品の主人公世良もバチスタシリーズ内で活躍している。 ブレイズメス1990、スリジエセンター1991とシリーズの続編が刊行され、三作ともに海堂尊作品らしくテンポの良い展開とリアルな医療現場の実態が描かれ、バチスタでは狸と呼ばれる程切れ者の高階院長が、何故田口を自分と似ていると話すのかなど、バチスタファンが嬉しいシーンが様々描かれている。 2009年には講談社より上、下巻にわかれて文庫本が刊行された。
ブラックペアン1988の評価
ブラックペアン1988の感想
若かりし頃の「バチスタ」キャラ
「チーム・バチスタ」シリーズと同じく、東城大学医学部付属病院を舞台に繰り広げられる物語。しかしタイトルの通り、1988年が舞台で、研修医・世良の目を通して、若い日の高階、藤原、猫田、花房、田口、速水、島津ら「チーム・バチスタ」シリーズのメインキャラクター達の姿が語られている。1988年の医療がどんなものだったか、実のところ記憶していないが、読むことで医療は四半世紀でここまで進歩したのかとしみじみしてしまう。ところでこの物語の中には、大学病院内での権力争いの場面は存在するが、誰一人悪くは描かれていない。皆、自分なりに真摯に患者に向き合い、自分なりの医療を追求しているのだ。その姿は、世良だけでなく、読者の目にも非常に格好良い。「チーム・バチスタ」程のエンタメ性はないが、とても「読ませる」作品だと思う。