十字架のあらすじ・作品解説
十字架は、重松清が、講談社100周年を記念して書き下ろし、2009年12月14日に発売された日本の小説である。 この作品は、中学二年のときにいじめを苦に自殺した少年が残した遺書と、その少年の死後、残された少年の周囲の人々の様子や思いを、さまざまな視点で表した作品である。 自殺した少年が思いを寄せ遺書内で謝られた少女、遺書内に親友と書かれていた少年、自殺した少年をいじめていた2人の少年といじめていたにも関わらず、遺書で名指しをされていなかった少年、家族など、少年の周囲のさまざまな立場の人間が物語に登場し、物語は進んでいく。 いじめ問題について、直接いじめに関わってはいないが関心すら持たない人間は、いじめに直接手を出した者たち同様の罪があるのか、いじめの加害者となり得るべきかという大きく難しい問題にも取り組んだストーリーになっている。 平成22年に、講談社による第44回吉川英治文学賞を受賞するなど高い評価を得ている作品である。
十字架の評価
十字架の感想
生きることが、十字架を背負うということ
重松清さんの作品はあまた読んでいます。この作品は、ある事件をきっかけに、いじめの問題が激しく議論された時に、読みました。親友だと思っていない同級生がいじめで自殺をし、被害者の彼に親友だと思われていた主人公と、彼に思いを寄せられていた女の子が、罪の十字架を背負って生きていくという内容です。これは、いじめを知っていながら、「傍観する」ということ、「第三者に徹する」といういじめの残酷さと背景に警鐘をならしている作品といえます。一見、どうして遺書に名前を書かれてしまっただけで、これほどに重い十字架を背負わなければならないのだという気持ちにさせられるくらい、「責め」の重さが主人公と女の子に襲い掛かってきます。たかだか十やそこらの年齢で、まわりをまきこんで、いじめの流れを変え、たいして仲良くもない友人を救い出すエネルギーがあるのか?それは、大人の私達が十分しんどいことだと分かっています。けれど、だ...この感想を読む
いじめ問題を様々な角度から見ることのできる一冊
今年一冊目に読もう!と決めて、一月一日にわたしが読んだ作品です。 正直に言ってしまえば、この決断は間違いでした。なぜなら、この小説がいじめという重いテーマを扱っていて、新年そうそうたいへん暗い気持ちになってしまったからです。 もちろん作品自体はまったく悪くありません。素晴らしいです。 いじめを受けて自殺してしまった友人の遺書に親友だったと書かれてしまった主人公の少年や、亡くなった少年の家族を中心に、ストーリーは進んでいきます。自分は彼のことを親友だなんて思っていなかった主人公は、戸惑いながらも少年が受けていたいじめや、遺族に向き合っていきます。 今でこそ、世間も、いじめについて広く取り上げるようになりましたが、一昔前までは見向きもされなかったのが実情です。いじめをしていた側だけでなく、それをただ傍観していた側の人間も批判されるべきであるというメッセージが込められているような気がしました...この感想を読む