下り特急「富士」殺人事件の評価
下り特急「富士」殺人事件の感想
探偵橋本の幻の恋
人生何度でもやり直せるこの作品は「続編」や上下巻を銘打ってはいないが、北帰行殺人事件の続編という位置づけになっている。結婚まで考えていた恋人を自殺で失い、恋人に危害を加えた犯人に報復するために警察を辞め、しかも前科者になってしまった橋本は、単刀直入にかわいそうとしか言いようがなかった。いくら犯罪を犯したのが警察を辞めた後とはいえ、周囲は彼を元刑事なのに、というレッテルで見るだろう。橋本はこの先どうなってしまうのだろうという懸念はあった。しかし、亡くなった服役者の遺品を預かる役目を託されたのも、北帰行殺人事件で出会った亜木子が橋本を待ち続けたのも、彼の根底にあった正義感が信頼に値するものだったからに他ならない。橋本自身、前科者になっても信頼し続けてくれる十津川のような上司に恵まれたということも大きいが、作品を通じ人生に前向きな姿勢を持ち続けていた点に逞しさを感じる。推理ものではあるが、橋...この感想を読む