あれ?これはいつの作品だ?と感じる不思議の種明かしと、ブラックジョークがきいた作品
時代背景がおかしい西村京太郎氏自らのあとがきや玉前譲氏の作品解説を後回しにしてそのまま読み始めると、この作品は一体いつの話だという違和感がある。話題としてはオウム真理教の事件などの記述もあるので、少なくとも1993年以降が舞台となっているはずである。文庫本自体も初版が2001年。しかしそこはかとなく昭和臭、強いて言うと昭和30年代のようなにおいがする。この作品は江戸半太郎というミステリー作家(自称)が主に活躍するが、彼が住んでいるアパートが間借りというところまではともかく、風呂が薪で焚くもので、大家一家がたまにしか焚いてくれないため、普段は銭湯を使っているようだ。いくら何でも、かえって燃料代がかかりそうな薪を使って風呂焚きをしてるアパートなど、平成の世ではまずないだろう。また、江戸半太郎の推理小説うんちくが繰り広げられるが、全体として「古典」と呼んでいい作品ばかりだ。あとがきでその理由がはっきり...この感想を読む
4.34.3
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