愛されていない子どもには、あそびがない。
田所清佳
理解が深まる小説レビューサイト
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全体に漂う気持ち悪さ「母性」という穏やかで神聖なるものの象徴のようなタイトルにもかかわらず、このストーリーには全体的に湿度の高い気持ち悪さをまとっている。それは粘性の高い溶液に浸っているような不気味さだ。読み始めてすぐ直感でそれを感じたけれど、それがどこから来ているのか理解するのにそれほど時間はかからない。母親の手記と娘の手記と交互に語られるこの物語は、自分勝手で自己満足のみで成立した歪んだ愛情を自分の好きなように投げようとする母親と、とそれをなんとか受け止めてろ過し、正常な愛情として自分のものにしようと奮闘した娘の戦いそのままである。そしてここまで歪んだ愛情を正しいものとして疑わない母親の人格はどこで壊れたのか、それは最後までわからないままだった。母親は自身の母親とは仲がよすぎるくらいの仲だった。友達親子とも姉妹親子とも言われるような、限りなくくっつきあった関係は傍目にはとても不自然...この感想を読む
女子高生が自殺を図った、という内容から始まります。女子高生が自殺を図り、現在意識不明である、という報道内容から物語は始まります。最初から人が死ぬのか、重たい内容から入るなあとタイトルの母性とはかけ離れているなと思っていました。けれど、その女子高生の母親が、「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて信じられません」とコメントを発表する。このコメントをポイントに、物語は進みます。湊かなえ先生の作品を手にしたのはこの作品で2作品目です。今回も重たいなあ、最後は救われるといいなあと願いながら、読み進めました。母の手記、娘の回想、母性について、リルケの詩視点は三つ。ネタバレになってしまいますが、[娘の回想]で主人格になる女の子(ここでは娘とします。)は[母性について]でも主人格として話を展開させています。小説冒頭は[母性について]ですが、その新聞記事のような内容に娘が興味を持ち、自殺を図った...この感想を読む
田所清佳
主人公の娘が自分の半生を回想しながら、自己を振り返り、母親から愛されて育てられず、周囲の大人たちの反応を気にしながら生きてきたことを思いながら自己分析しているものととらえられた場面。