一つの物語が引き寄せる、夢に破れた人たちの物語
始まり方は平凡だった最初は、小説家を目指す少女とその友達の甘酸っぱいような交流や、年頃の少女らしい恋などの話で、それほど心惹かれるわけでもなく平凡な始まり方だった。ハムさんとの恋愛も、本人になんの話しもせずにいきなりの婚約宣言など、昔はこれが当たり前だったのだろうかと思わせる展開だった。主人公である絵美もいつも受身で、ただの読書好きで空想好きの少女ではない、どこかしらめんどくささを醸し出している。だからこの主人公はあまり好きではなかった(この町から出られるわけがないと繰り返し言うその卑屈さも、嫌なところだった。いわばそれがリアルなのかもしれないけれど)。絵美の恋人であるハムさんも、何も知らない少女を見たことのない世界に連れ出してやろうという、いささかマッチョな驕りが見え隠れするし、それほど魅力的にも思えなかった。だからこそ、夢を実現させるために絵美が唯一自分で動いた、松木流星の元へ弟子...この感想を読む
4.04.0
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