傷ではなく傷口。 - 赤×ピンクの感想

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赤×ピンク

4.504.50
文章力
4.75
ストーリー
4.75
キャラクター
4.50
設定
4.50
演出
4.25
感想数
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読んだ人
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傷ではなく傷口。

5.05.0
文章力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

『赤×ピンク』

みなさんは、この『赤×ピンク』の著者である桜庭一樹さんを知っていますか?

私は、桜庭一樹さんの本を読むのは、実はこの『赤×ピンク』という本が初めてです。

きっかけは二階堂ふみさんが桜庭一樹さんの本を読んでいる、ということで、二階堂ふみさんの上品さ、佇まいのルーツをさぐるために読み始めました。

本屋さんで、この本を棚から取り出したとき、表紙に惹かれました。抽象的な絵で、オレンジ、黄色、紫、混ざりあった色。透き通る水面に浮かぶ、花びらのように見えます。みなさんは、何に見えますか?

この物語の核となる登場人物は、真由、美子、皐月の3人。そして、もう1人、千夏。本の構成が File.1、File.2、File3となっていて、File.1は真由目線、File2は美子目線、File3は皐月目線です。

傷ではなく傷口。 

みなさんは、身体ではなくて、目では見えないけれど確かにある「傷」や「傷口」をもっていますか?

登場人物たちは、みんなどこかに「傷口」をもっています。傷ではなく、傷口。

傷は、痕が残る場合もあるけれど、もう痛みはないようなイメージがあります。

傷口は、もっと生々しい。見ているだけで、痛い。もう死んじゃうんじゃないかってくらいの姿をしています。

そういえば、どこかで、傷口からばい菌が侵入して脳までいったら、死ぬことがあると聞いた事があります。本当かどうかは、わかりませんが、傷口は、弱々しいもののようです。

私の傷は、たまにぽっくりと開き傷口になります。生々し〜い傷口に。

勝手に開くわけではなく、開けられるのかもしれませんが。

私には、ずっと2つのコンプレックスがありました。今も、傷と傷口を繰り返すから、コンプレックスがあります、か。過去形の方が話しやすいので、過去形で話します(笑)。

そのコンプレックスは顔の中にありました。だから、なんでもおかまいなしに口に出してしまう小中学生のころは、4日に1回くらい、指摘されて、嫌な気持ちになりました。傷は、傷口に。

傷は、治りかけてるからいいんです。つまり、もう過去のこととして受け止められる。痕が残っているだけだから。死んじゃう可能性はないから。

だけど、傷口は…。死んでしまいたいくらいに辛い気持ちになる。なんでもないことなのに。

でもそれは、傷口のときは気付くことができない。リアルタイムのときは、気付けない。

それはわたしたち『ガールズブラット』出演者たちの、共通点で、同じ痛みで、パックリ開いたよく似た傷口だった。

このときの『傷口』は、私のとは、また違う。

さみしいよ。

みなさんは、どんなときにさみしくなりますか?

「さみしいのは、生きているから」と当たり前のことを言いたいところですが、、、。

わたしは、ふと気づいた。

檻の中で、いま初めて、一人ではなく誰かといるのだということに。

自分だけがこんな状況にいて、自分だけが辛くて、自分だけが戦っていて。

そう思うこともあります。だけど、自分以外の人も、そんなふうに思うこともある。

自分だけじゃないんだ。とも、思います。分かってる。

だけどやっぱり、辛いときは辛い。

私は、そういうとき、周りにいる人に八つ当たりしてしまうから、

真由や、美子や、皐月や、千夏は、そんなこと一切なくてすごいなあ。

真由や、美子や、皐月や、千夏の佇まいは、自分と向き合って戦ってきたからこそ、今も戦っているからこそ、のものなんだあ。

誰かに八つ当たりしたり、誰かを責めるのは、自分が自分と向き合っていないから。戦っていないから。

自分が恥ずかしくなりました。

私が、八つ当たりをしてしまうのは、母に、です。

私の人生に口出ししてほしくない。口出しする権利なんてない。

もしも、母に私の人生について口出しをされたら、私は、いつでもイライラすると思います。

でも、そのイライラは、きっとイライラという感情ではなくて、その時々で違うはず。一纏めにして、自分の感情は「イライラ」とするのは、自分と向き合っていないから。戦っていないから。

自分の言葉を手に入れたい。きっとそのときは、真由や、美子や、皐月や、千夏のような佇まいになれる気がするから。

この物語の初めの方、仕事後の真由と美子のやりとりの間に流れるものが、素敵でたまりませんでした。白い肌のような、でも、温かくて、。

どうしたら真由と美子のような仲になれるかな?。

美子と皐月もそう。皐月と千夏もそう。どの登場人物の間に流れるものも、透き通っていて、柔らかくて、心地いい(普段のやりとり)。愛っていうと、熱すぎる気がして、でも、形を変えた愛かもしれない。

眠れない夜に考えてしまう。

思春期だけ人生について悩むと思っていたけれど、いくつになっても、答えの出ない問いみたいなものは出てきそうだし、「生きてる意味」とか、夜眠れないときに考えると思うけど、戦います。

真由、美子、皐月、千夏に出会えて、友達になった。私も、戦います。

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