傷ではなく傷口。
『赤×ピンク』
みなさんは、この『赤×ピンク』の著者である桜庭一樹さんを知っていますか?
私は、桜庭一樹さんの本を読むのは、実はこの『赤×ピンク』という本が初めてです。
きっかけは二階堂ふみさんが桜庭一樹さんの本を読んでいる、ということで、二階堂ふみさんの上品さ、佇まいのルーツをさぐるために読み始めました。
本屋さんで、この本を棚から取り出したとき、表紙に惹かれました。抽象的な絵で、オレンジ、黄色、紫、混ざりあった色。透き通る水面に浮かぶ、花びらのように見えます。みなさんは、何に見えますか?
この物語の核となる登場人物は、真由、美子、皐月の3人。そして、もう1人、千夏。本の構成が File.1、File.2、File3となっていて、File.1は真由目線、File2は美子目線、File3は皐月目線です。
傷ではなく傷口。
みなさんは、身体ではなくて、目では見えないけれど確かにある「傷」や「傷口」をもっていますか?
登場人物たちは、みんなどこかに「傷口」をもっています。傷ではなく、傷口。
傷は、痕が残る場合もあるけれど、もう痛みはないようなイメージがあります。
傷口は、もっと生々しい。見ているだけで、痛い。もう死んじゃうんじゃないかってくらいの姿をしています。
そういえば、どこかで、傷口からばい菌が侵入して脳までいったら、死ぬことがあると聞いた事があります。本当かどうかは、わかりませんが、傷口は、弱々しいもののようです。
私の傷は、たまにぽっくりと開き傷口になります。生々し〜い傷口に。
勝手に開くわけではなく、開けられるのかもしれませんが。
私には、ずっと2つのコンプレックスがありました。今も、傷と傷口を繰り返すから、コンプレックスがあります、か。過去形の方が話しやすいので、過去形で話します(笑)。
そのコンプレックスは顔の中にありました。だから、なんでもおかまいなしに口に出してしまう小中学生のころは、4日に1回くらい、指摘されて、嫌な気持ちになりました。傷は、傷口に。
傷は、治りかけてるからいいんです。つまり、もう過去のこととして受け止められる。痕が残っているだけだから。死んじゃう可能性はないから。
だけど、傷口は…。死んでしまいたいくらいに辛い気持ちになる。なんでもないことなのに。
でもそれは、傷口のときは気付くことができない。リアルタイムのときは、気付けない。
それはわたしたち『ガールズブラット』出演者たちの、共通点で、同じ痛みで、パックリ開いたよく似た傷口だった。
このときの『傷口』は、私のとは、また違う。
さみしいよ。
みなさんは、どんなときにさみしくなりますか?
「さみしいのは、生きているから」と当たり前のことを言いたいところですが、、、。
わたしは、ふと気づいた。
檻の中で、いま初めて、一人ではなく誰かといるのだということに。
自分だけがこんな状況にいて、自分だけが辛くて、自分だけが戦っていて。
そう思うこともあります。だけど、自分以外の人も、そんなふうに思うこともある。
自分だけじゃないんだ。とも、思います。分かってる。
だけどやっぱり、辛いときは辛い。
私は、そういうとき、周りにいる人に八つ当たりしてしまうから、
真由や、美子や、皐月や、千夏は、そんなこと一切なくてすごいなあ。
真由や、美子や、皐月や、千夏の佇まいは、自分と向き合って戦ってきたからこそ、今も戦っているからこそ、のものなんだあ。
誰かに八つ当たりしたり、誰かを責めるのは、自分が自分と向き合っていないから。戦っていないから。
自分が恥ずかしくなりました。
私が、八つ当たりをしてしまうのは、母に、です。
私の人生に口出ししてほしくない。口出しする権利なんてない。
もしも、母に私の人生について口出しをされたら、私は、いつでもイライラすると思います。
でも、そのイライラは、きっとイライラという感情ではなくて、その時々で違うはず。一纏めにして、自分の感情は「イライラ」とするのは、自分と向き合っていないから。戦っていないから。
自分の言葉を手に入れたい。きっとそのときは、真由や、美子や、皐月や、千夏のような佇まいになれる気がするから。
この物語の初めの方、仕事後の真由と美子のやりとりの間に流れるものが、素敵でたまりませんでした。白い肌のような、でも、温かくて、。
どうしたら真由と美子のような仲になれるかな?。
美子と皐月もそう。皐月と千夏もそう。どの登場人物の間に流れるものも、透き通っていて、柔らかくて、心地いい(普段のやりとり)。愛っていうと、熱すぎる気がして、でも、形を変えた愛かもしれない。
眠れない夜に考えてしまう。
思春期だけ人生について悩むと思っていたけれど、いくつになっても、答えの出ない問いみたいなものは出てきそうだし、「生きてる意味」とか、夜眠れないときに考えると思うけど、戦います。
真由、美子、皐月、千夏に出会えて、友達になった。私も、戦います。
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