砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないのあらすじ・作品解説
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないALollypoporABulletは、2004年11月に富士見ミステリー文庫より刊行されたライトノベルである。作者は2008年に「私の男」で第138回直木賞を受賞した女流作家「桜庭一樹」。イラストは「むー」が担当した。 リアリストで早く大人になりたいと願う女子中学生「山田なぎさ」と人魚を自称する変わり者の転校生「海野藻屑」の2人の少女の交流、そしてその先に待ち受けているショッキングな結末を描いた作品。 その巧みな文章とストーリー展開によってライトノベルの読者だけでなく一般文芸読者からも高く評価された作品で、後に直木賞作家として確固たる地位を確立する作家「桜庭一樹」を生み出すきっかけを作った。2007年2月には富士見書房から単行本が、さらに2009年2月には角川文庫から文庫本が刊行されているが、一般書籍として刊行するためか、いずれからも発表当時にあった「むー」による挿絵は削除されている。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないの評価
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないの感想
愛情
父と娘。「私の男」が代表であるが、桜庭さんの作品のテーマとして知られているこの2者の関係。この作品の中では海野家の父と娘が、歪んだ愛情互いに表現している。「汚染なの。」これは、父から受けた虐待の跡を指す藻屑の表現である。それは父親を庇うためであると同時に、愛ゆえに存在してしまう感情の歪みを表現したものであると私は捉えた。初めて私と藻屑が会った日、「死んじゃえ」と藻屑が言ったのも本人にとっては愛情表現だったのである。このことからも、藻屑にとって愛と死は紙一重なことが分かる。ではなぜ愛と死という一見矛盾しそうな感情が紙一重になるのか。“Because I miss you.”「答えられたらヤバイクイズ」として紹介されているこの答えがそれを示している。このクイズでは愛する人とは別の対象を殺しているが、対象は愛する相手にも及ぶ。相手を愛して止まない、その感情を「相手を殺す」ことによって保存出来るのである。殺してし...この感想を読む
少女たちの心
直木賞作家桜庭一樹の出世作である本作は、もともとはライトノベルレーベルから出版されたものです。田舎に住む少女と都会から来た少女。誰もが一度は経験したことのあるような、不安定で壊れやすい思春期を鮮やかに描いています。「少女」の描き方に定評のある桜庭一樹ならではの、独特の雰囲気は、読む者を虜にします。可愛いだけでなく、心の奥底にさまざまな黒い思いが渦巻いている、中学生特有の心理をうまく表現していて、読めば「あの頃」のことを思い出してしまう、そんな小説だと思います。青春ミステリーと称されていますが、ミステリー要素はさほど強くなく、ミステリーに苦手意識のある人でも読めるものだと感じました。
衝撃的な内容ですが、とても面白かったです
この作品をきっかけに桜庭一樹さんの本を読むようになりました。 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」では、中学生ならではの残酷さや、落ちぶれた有名人とその家族が地方都市で生きることの難しさ、ゆがんだ愛情が丁寧に描写されています。物語の衝撃的な内容とは裏腹に、主人公のなぎさは中学生ながら自分の将来の可能性を正確にはかる現実主義者で、そのギャップもいい味になっています。 物語中の重要な人物として登場する海野藻屑は、わけがわからない言動や行動が目立ち最初は中学生らしくないと感じましたが、徐々に見えてくる子供っぽさや幼さに惹かれるものがありました。桜庭一樹さんの描く少女たちはどれも魅力的ですが、この二人は特にわたしのお気に入りです。