道徳という名の少年の評価
道徳という名の少年の感想
容貌という遺伝の骨頂
この作品は、桜庭さんの「少女七竃と七人の可哀想な男たち」と相通ずるものがある。「容貌における美」を一つのテーマとする。妖艶で魅惑的な美。七竃の方はそのかんばせの美しさと淡白で無関心な内面とを対比させて物語を展開させているように感じたが、この作品では端的に美と醜悪を対比させているのである。美しく生まれたものは決まって、ある時から身動きが取れないほど太り、目も当てられない容貌となる。その意味するものとは諸行無常、また天は二物を与えず、といったところだろうか。ジャングリンよりもジャングリン・パパを求めた主人公からも、容貌の美しさを単なる長所の一つとして描いていないことが見て取れる。また、バターの溶けたような黄色い目、という表現は醜悪を率直に表している。しかしその目が表すのは醜悪だけではないと思われる。美しい容貌と同じくその目も決まって遺伝されていくものとして描かれており、それはまさに逃れられ...この感想を読む
とにかくこの一言。「不思議でした」
童話のような、不思議なお話でした。 最初の章で、町で一番美しい女性が子供を産むのですが、彼女は結婚しておらず、子供の父親が誰であるかはなぞのままなのです。町の女たちは敬虔なクリスチャンであるため、この子供の誕生を恐れていました。そしてなんとこの女性、産んだ赤子に1という名前をつけるのです。その後に産まれた子供は三人、皆女の赤ん坊で、名前は順番に2、3、そして最後の子供だけ悠久と名づけられました。この名前の付け方こそ、桜庭一樹さんの作品らしいなと感じました。 物語は世代を変えつつ進んでいくのですが、道徳という少年も少ししてから登場します。 全体的に昔のお話というか、詩のようなイメージでした。不思議なお話だったな、という感想が残っています。寓話が好きな方は面白いのではないでしょうか。