私の男の評価
私の男の感想
作品構成
「父と娘の愛情」は桜庭さんの作品のテーマの一つとされるが、その最終形態とも言えるのがこの作品である。冷たい北の海という舞台が2人の狂おしい愛情を助長する形で物語が進んでいく。この作品は、時系列が逆になっている。社会人であった花は物語が進むにつれてどんどん小さくなっていくのだ。そこにはどんな意味があるのか。つまり通常の作品であれば花の成長と共に事の結末を迎えることで登場人物と一体になり、臨場感を持って読み進めることが出来るのだが、この作品では最初に結末を知り、その後徐々に原因を探っていく構成なのである。しかし、そこには文学的な意味が存在するのである。実は淳吾と花の愛情表現は物語が進むにつれて徐々に深く、とりとめもなくなっていく構成なのだ。もちろん、成長するにつれて愛情が薄れていくわけでは決してない。しかし、時間が経つにつれて淳吾は年を重ね、次第に性的に衰えを覚えていくのだ。そればかりでなく...この感想を読む
桜庭さんらしい一冊
第138回直木賞受賞作品です。章ごとに語り手が変わり、読み進むに連れて年月がさかのぼっていく形になっています。 物語の展開に、いちいち驚いてしまいました。花と淳悟の関係性の変化や、周囲を取り巻く人物の心情が細かく描かれていて、分かりやすく読めました。衝撃的な内容が多く含まれていますが、わたしは面白い作品だと感じました。 最初の花の年齢設定が大人だったので、少女を描くのが好きな桜庭さんにしては珍しいなと思いましたが、章を進むにつれてだんだん若返っていき、少女の年齢設定になったので、納得しました。 来年には映画が公開されるようなので、それも楽しみですね。