思春期のための小説
いまいちだった点
- 思春期のための、思春期時代を描いた小説であるため、数年後見返すと面白みを感じることが難しいです。
- 主人公ヒロインである長谷川の友達である小倉という女の子がいますが、登場人物として出すのであれば、もう少しキャラを強めに出すか魅力的に描いてほしかったです。なぜならただでさえ疎遠になりつつあるという人物であるのに、出すほどの重要人物だったのか?という思いが出てくるからです。もしかしたら異色な主人公と対極にいる人物として、あえて出したかったのかもしれませんが、それならば、何故対極の二人がとっても仲良しなのかが不思議です。それを納得させるだけのエピソードは少なくともなかったように思います。
- 一つ一つのシーンで濃厚で生々しい文章を使うのに、ほかの登場人物たちとの出会いは少し印象が薄いです。たまに本当はどこを強調したいのかな?と思うこともあります。
良かったところ
- 思春期真っ盛りの小説であるということは先ほどでも取り上げました。だからこそ、同じ思春期を中1で迎えたばかりの私が読んだときはインパクトが大きかったです。主人公と同じくほかの子たちと馴染みづらく、異彩を放っていた私にとって、この中の少女はあまりにも同じような行動をするもう一人の自分のような存在でした。
- 表現方法が面白いです。人と人との距離、近いのに仲間外れにされているような疎外感を、綿谷さんは「目に見えない柔らかな膜で覆われている」「こわごわと触れると柔らかなゴムのようにそっと押し返される」というような表記を使っていて、非常に面白かったです。
- 長谷川と仲良くなる(?)蜷川という男子がいますが、この男子が自分の気持ち悪さを基本的には隠そうとしないところが面白さの秘訣かなと思っています。異色すぎて近寄ってくるものが少ないだけで、実際は寄ってきたら受け入れるという寛大さがうかがえます。
まとめのようなもの。
年数がたってしまうと、あまり「何度も読み返したい!」と思うような小説ではありませんでしたが、綿谷さんがデビューして間もないころ、親がくれたのがこの本でした。綿谷さんが私と年端も変わらぬ少女だったというのが手に取るきっかけだったようです。
思春期の人、どこか疎外感を感じている人、どこにも逃げ場がないと切羽詰まっている人、特別誰かに何かされているわけじゃないのに否定され続けているような感覚をもっている人は一度は読んだほうがよろしいかと思います。
きっと、そう思っているのは自分だけではなかった、そう思わせてくれます。
小説のラストは少しわかりづらいですし、主人公の成長という面では今一そういったところは見づらい作品ではありますが、さっくりと読める面白さや、同じことを思っていてもいざ別の観点からの言葉は斬新であり、楽しさがあると思います。
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