愛だけで子どもが生まれないのはなぜだろう。愛がないセックスだけでも子どもは生まれるのに、どれだけ愛していてもセックスしないと子どもは生まれない。
江藤良香
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小説レビュー数 3,368件
本命くんとキープ君ようは都合のいいように事を運ぼうとする女性の話だな、と思いました。しかし、そこまで頭の中がお花畑ではないところが妙にリアルで、キープ君からはアプローチを受けていて本命くんの心理ははっきりとわからないという状況でもがいています。嫉妬ももちろん当然の過程のごとくきちんと描かれ、きちっきちっと時間の流れに乗っています。むしろここで劇的な変化をもたらすことも小説の醍醐味ではあるのですが、この作品で綿矢先生は求めませんでした。それこそ「ひらいて」のような刺激に溢れた内容にしなかったのです。そこがまた巧みなんですよね。高校生の恋愛と社会人の恋愛の熱量といいますか、大人の冷静さが可愛げをなくしている描写なんか比較するとぞっとするほど見事です。悲しいかな、大人になると将来というものが現実に成り代わって目の前に迫ってきます。好きだけでは幸せになれない、生活できないことを肌で直に感じてし...この感想を読む
共感できないけど、共感できる主人公のヨシカは、学生時代に恋した同級生のことが忘れられず、26歳になるまで貞操を守り続けるOLだ。物語を遠巻きに見ていると、この女性はやることなすこと、とにかく、痛い。痛々しい。冒頭のトイレで嗚咽を漏らすシーンから、嘘の妊娠で休暇をもらおうとするシーン、久々に会えたイチ彼の前でぎこちない態度しかできないシーンなど、あまりに苦々しくて見ていられない。けれど、痛い、と感じるというのは、この物語で奔走するヨシカに、わたしが共感しているからではないだろうか?ヨシカの痛みが、こちらにも迫ってくる。友人に、恋したイチ彼に、好きだと言ってくれたはずのニ彼に、みんなに裏切られたような気がして、自暴自棄になってしまう。環境の違いこそあれど、この作品を読んでいる人にだってそんな経験はあると思う。ささいなきっかけで死にたくなったり、涙が出たり。だからこの痛い女性に共感してしまうのだ...この感想を読む
26歳まで、中学生の頃の脳内恋愛(片想い)をこじらせている、OLが、現実の恋愛との間で、どう成長していくかという小説、です。手段は多少卑怯だとしても、中学校以来会って無いイチに会うために同窓会を開くのは、すごい行動力。同窓会中に、次に繋げるための行動を起こす所もすごい。だって、主人公のヨシカは、クラスメイトに名前を思い出してもらえないほどの存在だったのだから…関東に出てきている4人で集まった時、皆が寝てしまってから、2人きりで話せたのに、話は盛り上がっていたのに、名前を覚えてもらって無かった、という些細な事で一気に恋が終わってしまうのは、それって本当に恋だったのか?と。相手がクラスメイト達にいじめられていた、と感じていた事にすら気付かなかったのだし。それって、やっぱり脳内恋愛でしかなかったと思う。二の事は、ずーっと嫌っていたみたいだけど、二の事を最後に名前で呼ぶ所で、二の事を受け入れた...この感想を読む
江藤良香
中学生の頃からの長年の片思いに破れた主人公ヨシカが、好きではないけれど、自分に好意を寄せてくれている男性を目の前にして考えたこと。
江藤良香
主人公が高望みだった片思いの相手への片思いを終わらせるときの自分への言葉。