しょうがの味は熱いの評価
しょうがの味は熱いの感想
眠れない夜に。
同棲生活何でしょうかね。ゆるいお話です。小さな悩みです。当事者にとったら大事なのかもしれませんが、他人から見れば思わず笑ってしまう、そんな和やかな作品です。この作品を読んであることを思い出しました。結婚当初、旦那との不和を深刻に考え、友人に打ち明けた時に笑い飛ばされたことがありました。今でこそ旦那の愚痴を言ったにすぎない出来事だったと受け止められるのですが、人間初めて我が身に起こることは深刻に考えがちですね。夜も眠れず、旦那にも余所余所しい態度でとても家庭が居心地の悪いものになっていました。しかし、他人から見れば笑い話なのです。あるあるネタと言いますか、みんなそれぞれの家庭で、夫婦間で経験していることなのだとその時言われました。当たり前です。別々の家庭で育ち、土地で暮らし、習慣や価値観はまったくと言っていいほど違います。それが当たり前なのです。お互いの着地点を一緒に暮らすことで見つけて...この感想を読む
綿矢りささんにしか描けない現代版のおとぎ話
「しょうがの味は熱い」という言葉のズレ綿矢りさ著作の本を久しぶりに手に取った。「整頓せずにつめ込んできた憂鬱が扉の留め金の弱っている戸棚からなだれ落ちてくるのは、きまって夕方だ。」と始まる冒頭文を読んで、いきなりビビビっと背筋に電流が走る。「しょうがの味は熱い」は恋人同士である奈世と絃の2人の視点でリアルな同棲生活を描いている。奈世はまるで初恋の熱が抜けきっていない乙女みたいで、盲目的に、少女漫画の主人公のように彼に愛されたくて仕方がない。その感情を、同棲といういつでも好きな時に会える恵まれた状況のなかで、持て余してしまっている。その感情は純粋で可愛らしくみえるけど、どこかがズレていて怖くなる。少しずつ曲がって縫われていく布が組み合わさって、出来上がり図がめちゃくちゃになってしまうような。他の著作もそうだけれど、綿矢りささんは女性がもつ、赤い剥き出しの傷を描くのがとても上手いと思う。婚姻...この感想を読む
結婚を決意するまでの、同棲生活の話
同棲している奈世と絃(ゆずる)、2人の物語、「しょうがの味は熱い」と、「自然に、とてもスムーズに」の2話が収録されています。共通しているのは、逃げ腰の絃、鬱陶しい程に、相手に寄りかかっている奈世。という関係性。「しょうが~」では、同棲生活の初めの方の話で、一度、部屋を出て行こう、と奈世が決意するまでの話。「自然に、~」では、奈世が絃にプロポーズするものの、拒否され、本当に部屋を出てからの話。一緒に居る間、二人はお互いがストレスで、絃はハゲができ、奈世は神経性胃炎になっていたというのに、ラストで絃が奈世を迎えに行き、大団円、となるのだが、現実にこういうカップルがいたとしたら、それはありえないと思うし、たとえ結婚しても上手く行かなくて、離婚に至るのではないかと思いました。長い間の同棲は、結婚へは続かないのかも、とも思いました。奈世の父が、「ほんとに合っている二人ならもっと、自然に、とてもス...この感想を読む