わしは死にたかね。死にたかねから、人を殺したのす。
人の器を大小で評するならば、奴は小人じゃよ。この小説は江戸時代の盛岡藩出身の下級武士「吉村貫一郎(よしむらかんいちろう)」という浅田次郎が創作した登場人物を、歴史上実在した人物達と共に小説に登場させ「封建社会で生きるということ」「貧しさとは」「家長として働くということ」「子々孫々に血が受け継がれていくこと」について、悲しくも最後に報われた想いの残る、浅田次郎の爽やかな文体で書かれた小説です。盛岡藩にて、藩学校の先生だった貫一郎は、幼い子供と病気がちな妻と共に貧しいながらに幸せに暮らしていましたが、雪国の盛岡藩は決して財政の潤った藩ではなく、毎年のように不作が続き、下級武士の一人に過ぎない貫一郎の俸禄ですらなかなか支払われず、家族が食べていけない有様でした。貫一郎の幼馴染の武士、大野次郎右衛門(おおのじろううえもん)は倹約の概念や支出を抑えるすべなどを見込まれて出世したほどに盛岡藩は財政...この感想を読む
5.05.0
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