ありえない!
実にありえない物語でした。はじめっから色々想像させてくれました。
『あのバス』に乗るので、今まで5股をしていた彼女たちひとりひとりに別れを告げに行く、というザックリ(?)としたお話。主人公の星野と、5股の彼女たちひとりひとりとのストーリーが語られていく小説です。
まず、『あのバス』とは何か。私はてっきり、星野はもう死にゆく運命であって、だから彼女たちにウソまでついてさよならを言いに会いに行くのだと、そう深読みしてしまいました。が、読み進めていくと、そんなことありませんでした。むしろ何か借金でもして出稼ぎに行かされる、しかもその出稼ぎはかなりきつくつらいものなのだという解釈をするようになりました。まぁ、読み終わった今でもそのへんは謎のままなのですが。
私は、最後にどんでん返しというか、バラバラの伏線を回収していき最後につながるストーリーが大好物なのですが、伊坂さんの小説はまさにそれにあてはまり、彼のファンでもあります。この小説もはじめは期待していました。が、ゴールデンスランバー、アヒルと鴨のコインロッカー、重力ピエロよりはるかに『それ』感がなく、淡々と、それでいてゆるやかに進んでいく小説だなぁと、それがはじめの印象でした。しかし、読み進めていくにつれて、ひとつの話、5股分あるので5話、また、最後の主人公と見張り役(?)の彼女とのやり取りの話、ひとつずつの話に結末、伏線回収があり、この小説を読み終えたあとは5冊くらい読んだような、そしてその5冊を回収するというか、その5冊で1冊の大小説だなと、大満足感がありました。
キャラクターの設定も、ありえないものばかり。でも読んだあとは、ありえる話かも・・・なんて思ってしまう、そんな小説でした。
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