バイバイ、ブラックバードのあらすじ・作品解説
伊坂幸太郎による小説『バイバイ、ブラックバード』は、太宰治の短編『グッド・バイ』を下敷きにした連作短編小説である。短編を一つ書き上げるごとに郵便で五十名の読者のもとに届く「ゆうびん小説」という双葉社による企画の一環として発表された。そうして発表された六本の短編をまとめた単行本が、2010年7月に発行。その後、同社より文庫版が2013年3月に発行された。 もうすぐ<あのバス>に連れて行かれて二度と戻って来られない、そんな状況に陥った主人公・星野一彦はその前に、別れ話をするべく五股をかけていた恋人たちのもとを順番に訪れていく。その監視役として同行する巨漢の女性・繭美は、ことあるごとに単語を塗りつぶされた辞書を取り出し様々な言葉を切って捨てる。そんな粗暴な繭美と、五股をかけているのに妙に魅力的な一彦のコンビが、五人の恋人たちのもとで様々な出来事に遭遇していく、なんとも不思議な数週間の旅路を描くストーリーである。
バイバイ、ブラックバードの評価
バイバイ、ブラックバードの感想
ありえない!
実にありえない物語でした。はじめっから色々想像させてくれました。『あのバス』に乗るので、今まで5股をしていた彼女たちひとりひとりに別れを告げに行く、というザックリ(?)としたお話。主人公の星野と、5股の彼女たちひとりひとりとのストーリーが語られていく小説です。まず、『あのバス』とは何か。私はてっきり、星野はもう死にゆく運命であって、だから彼女たちにウソまでついてさよならを言いに会いに行くのだと、そう深読みしてしまいました。が、読み進めていくと、そんなことありませんでした。むしろ何か借金でもして出稼ぎに行かされる、しかもその出稼ぎはかなりきつくつらいものなのだという解釈をするようになりました。まぁ、読み終わった今でもそのへんは謎のままなのですが。私は、最後にどんでん返しというか、バラバラの伏線を回収していき最後につながるストーリーが大好物なのですが、伊坂さんの小説はまさにそれにあてはまり、...この感想を読む
キック・キック・キック・・・
直近の伊坂氏の小説では一番好きになったかもしれない。太宰治の「グッド・バイ」をご存知だろうか、今作はその設定をそのままに伊坂調で書き上げられたもう一つの「グッド・バイ」である。大筋としては憎めない男が実は五股をしていて一人ひとりに別れを告げにいくというものである。そしてもっとも異色な点がヒロイン繭美の存在である、その表現からマツコDXをおもわせるような・・・笑 そのあまりに強烈なキャラクターにいつの間にか取り込まれているのが本書の楽しみである笑 憎めない五股の優男、星野青年とのコンビはこれ以外ないんじゃないかとラストには思わせてくれる。そしてそのラストが実に爽快であったのだ。結末こそ明かされないものの、優男と怪女の絆をひそかに感じさせてくれるような…
ラストの展開がニクい
主人公が、同時に付き合っていた5人の女性に対し、順番に別れを告げに回るという連作短編集。そもそもの設定からすごいなと思うのだが、一番すごいのは、主人公と一緒に行動するいろいろとひどい女性・繭美に対し、読み進めていくにつれて愛着を感じるように仕向けられること。最後まで読んだらもう伊坂幸太郎さんは本当に天才だな!と。そしてなんてニクい演出なのだろう!と思わせられる。読者の中では「バス」に関して、何の象徴なのだろうという点に焦点が当てられることが多いようだが(「『バイバイ、ブラックバード』をより楽しむために」でも触れられていた)、個人的にはそこはあまりこだわらなくてもいい部分ではないかと思う。ラストは秀逸なのだが、好みかというと大いに迷うところ。