フランスの普通の女の子の青春を体験する - アデル、ブルーは熱い色の感想

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フランスの普通の女の子の青春を体験する

4.54.5
映像
4.4
脚本
4.5
キャスト
4.3
音楽
4.0
演出
4.5

目次

2013年カンヌパルムドール受賞作

2013年、フランス映画。監督はアブディラティフ・ケシシュ。チュニジア人で子供の頃フランスに移住したそうです。これまでに4作品の監督脚本を手がけてきたもののいずれも日本未公開であり、この作品で2013年のカンヌ映画祭のコンペティション部門でいきなりのパルムドールを受賞、しかも主演女優二人にも同時に同賞が贈られるという快挙で一気に注目を集めることになりました。

私も当然彼の作品を見たのは初めてでしたが、この年に見た全ての映画作品の中でも特に印象深い一本になりました。これからも彼の作品はフォローし続けていこう、と思っています。

主人公の心に同化する体験

作品のタッチは、同じフランスの監督であるダルデンヌ兄弟を思い起こさせる、生々しい手触りで、いわゆる「ドキュメンタリータッチ」と称されるような撮り方の映画なのだけど、もちろんただラフなわけじゃない。むしろ研ぎすまされ、無駄がなく、美しい。

特徴的なのは、クローズ・アップの映像が非常に多用されていることでしょう。クローズアップって、とても扱いが難しいものだと思うのです。目も疲れるし、見苦しくなりがち。
ですが、この映画はクローズ・アップの洪水のような作りなのですが、けして嫌じゃないのです。むしろ浴びるように映画の世界、あるいは主人公アデルの心に同化する効果になっているように思えるし、実際明確にそういう意図を狙ってこのような作りになっているのだと思います。

本当に、主人公のアデルの心がしみじみと自分のことのように感じられることが、とても、なんというか切なくて温かい経験だったです。
青春まっただ中の、10代の、これから性に目覚め、自分の人生を切り開こうと迷いながら模索している少女の、瑞々しい心持ち。もう大人においては良くも悪くも失われ、通過してきてしまった心境を、追体験できるような映画です。

青春って、なんて不格好でビビッドで、呆れるほどストレートでてらいがない。それって、最中にいるととても惨めで苦しいことも多いのだけど、やっぱり素敵なことなんだなあと、この映画を観た後は改めてしみじみ思ったことでした。
そんな、甘酸っぱいような苦しいような気持ちがじーーんじーーんと映画を観る間、胸に広がって行きました。
だから、この映画はレズビアンという設定はあるものの、あくまで普通の少女の普通の地味な人生がベースになっている作品なのですが、多くの人の心に訴えるある種普遍的な切実さを内包しており、179分という大変長い映画ですが、退屈することなく見せきってくれます。

過激なセックスシーン

この作品で必ず取りざたされるポイントは、やはり写実的でかなり過激なセックスシーンでしょう。私も劇場でおお、とのけぞりました。結構な尺で、結構なあからさま感でぐいぐいと見せてくるのでどぎまぎしましたが、十代のコントロール不能なまでのパッションというか、本能が炸裂している感じがひりひりと伝わって来て、こんなにもポルノすれすれのシーンでありながら、紛れも無い青春の匂いがする、というのはすごいものだなあと思います。

同時に、役者二人のプロ根性につくづく感心いたしました。アデル役のアデル・エグザルホプロス(むつかしい名前!ギリシャ系の人みたいです)はともかく、エマ役のレア・セドゥは、最近では007でモニカ・ベルッチと並んでボンドガールもやったりと、大スターへの階段を着々と進んでいっており、個性的なルックスも相まってすごく気になる女優さんのひとりです。

もちろんセックスシーンは彼らの恋愛描写のうちのひとつであり、二人の絡むどのシーンも、胸がせつなく痛むリアリティに満ちています。個人的には別れた後、アデルがエマに復縁を迫るシーン、鼻水をだーだー垂らしながら、泣いて思いのたけを話すシーンが、思い出してもちくっとするようなせつなさで忘れ難いです。

フランスという国を垣間見せる

そして、この映画は等身大のフランスの人々の暮らしを垣間見せてくれるという点でも興味深いものがありました。アデルとエマがぎくしゃくし、やがて破局に至る原因も、二人の民度の違いというか、フランスにおける歴然とした階級社会のありかたが重要なモチーフになっていますので、とりわけ家族を交えた食事のシーンや、双方の友人付き合いや社交の違いは際立った形で描かれており、生々しいし、説得力があります。

また、ある種のフランス映画を見ると、フランスという国は良くも悪くも非情で厳しい、とつくづく思わされることがあります。きっぱりとしていて、残酷で、大人でもある。フランスのお国柄みたいなものは、映画を見るとようく理解ができる気がします。この映画もしかり。

アデルが高校生なので、授業のシーンが幾度も出て来るのですが、フランスの普通高校の国語の授業の内容が、日本のそれとは雲泥の差で深みのあるものであり、学生の立場もシビアで、皆真剣に未来のことを自分の責任において考えている様子は少しショックでさえありました。比べると日本の学生は考えられないくらい無責任でふわふわしてるぞ、そして日本の若者のなんと幼稚なことか、と痛感するものがあります。

フランスでは、高校生にもなったら「誰かが自分の人生をなんとかしてくれる」というような甘えた考えを持っている子は日本よりきっとずっと少ない。というか、そのような甘えた考えではとてもサバイブしていけないのだろうな、と思います。

また、あくまでクールに哲学的に恋愛について授業で学んでいる様子を見て、フランスは恋愛至上主義のような言い方をされることが多いけれど、恋愛は人生にとって語るに値することであるということが、授業における当たり前の前提としてあるという様子からも、そりゃ恋愛に重きを置く人々になるんだろうよ、伺い知れるのでありました。日本ではもっと照れて、真正面から語らないような気がします。

そんな本筋からは離れた見地からも面白く見ました。体験するに価する、力のある作品です。

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2人の女性の出会いから別れまで

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