アマデウスのあらすじ・作品解説
アマデウスは、1984年に製作された、ミロス・フォアマン監督による映画作品である。18世紀後半のオーストリア宮廷を舞台にして、イタリア出身の作曲家アントニオ・サリエリを主人公として、彼の視点から天才作曲家モーツァルトの姿を描く物語である。 F・マーリー・エイブラハム演じるサリエリは、オーストリア皇帝ヨーゼフ2世に仕える宮廷作曲家としての地位を築いていたが、彼の前にトム・ハルス演じるモーツアルトが彗星のごとく現れ、やがてその素晴らしい作品の数々が人々の称賛を集めたことから、彼の中に激しい嫉妬の感情が沸き起こり、次第に人生の歯車が狂いだしていく。天才と凡才の二人の作曲家を対照的に描くことで、複雑なドラマが展開していくことが大きな見どころである。 元となった作品はブロードウェイの舞台であるが、映画ならではの特性を活かし、歴史的建造物を用いたロケで当時の雰囲気を再現したり、迫力ある演奏シーンでは時代考証を踏まえて表現されていることから、その年のアカデミー賞において数々の賞を受賞している。
アマデウスの評価
アマデウスの感想
才能のない努力家の天才に対する嫉妬を、老獪さ、卑怯さ、悪意、陰湿の視点から面白おかしく描いた人間ドラマの秀作 「アマデウス」
この「アマデウス」という映画は、原作がイギリス人のピーター・シェーファー、監督が当時のチェコスロバキアの映画界から亡命してきたミロス・フォアマン、主人公はオーストリア人で、物語の舞台は、ウィーンという、アメリカ映画なのにアメリカ的な要素がひとつもない作品なのです。「アマデウス」という映画は、従来あまりなかったタイプの面白い人間ドラマだと思う。原作のピーター・シェーファーの戯曲は、日本でも過去、何度も舞台で上演されて評判となっており、その着想がまず、あっと言わせる面白さに満ちあふれている。西洋音楽史上、最も偉大な作曲家のひとりであり、文字どおり楽聖と呼ばれるに相応しい人物であるモーツァルトが、この映画ではとんでもない俗物として描かれているのだ。実に安っぽい、下品な青年であり、エッチな冗談ばかり言って不作法にケラケラ笑っている。天才らしい反権威主義的な傍若無人の奇行というのではなくて、それ...この感想を読む
壮大な舞台装置の中で繰り広げられる愛憎劇
圧倒的な18世紀ヨーロッパの世界観に身を浸す1984年作品。もう30年以上も前の作品なのに、自分にとってはいまだに鮮烈な印象を残す一本です。ある国の歴史や風俗、文化について知ろうとするとき、入り口としてそれを題材とした優れた映画を一本見る事は、どんなお勉強をするよりも勝ることだと思って います。そこに生きる人間の生き様を通して、ものすごく多角的に、感覚的に、心情的にまるごとその世界観を取り込むことになるからです。この作品をリアルタイムで見たのは多感な中学生の頃。ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生きた18世紀後半のヨーロッパの世界、人々の暮らしぶりや価値観は強烈な印象を残しました。1987年に製作されたベルトルッチの「ラストエンペラー」も、やはり圧倒的に異国を感じさせる映画として何十年経っても心の中の忘れ難い風景として留まっています。多感な時期にこういう上質な作品に出会えたことの豊かさを思いま...この感想を読む
幸か不幸か、同じ時代を生きた二人の作曲家。
これは素晴らしい映画です。長くて難しそうだなと思って見たんだけど、見終わった後はとても感動してました。 天才と非天才。モーツアルトは言わずと知れた天才で、全ての旋律が頭で合奏できるほどの才能の持ち主ですが、その天才ゆえに抱える孤独感に精神までおかしくなり。紙一重って言いますよね?本当にそんな感じで、あの狂った演技は素晴らしかったですね。次から次へと湧き上がってくる音楽に音符を書く手が追い付かないほど。それは頭が狂ってしまっても仕方ないって思えるほどです。そしてかたや凡才の作曲家サリエリのモーツアルトに対する嫉妬に狂った人生。若く亡くなってしまったモーツアルト、こんな年になるまで生きているサリエリ。モーツアルトを憎み続けたサリエリの人生は地獄そのものだったでしょう。なぜなら、彼らの音楽は逆にサリエリ音楽は誰も知らず、モーツアルトの音楽はいまだ生き続けているのですから。