大人の修学旅行
恩田陸さんのいわゆる「三月シリーズ」の一つです。同じ講談社から出ている「三月は深き紅の淵を」という小説の中に出てくる小説のあらすじを、作品にしたものです。
大学生時代の友人であった男女四人が、40代になって旅行へ行き、山歩きをしながら日常の「謎」を解いていくのがテーマです。その中で、恋人同士だった二人が別れることになった真実や、子供のころから抱えていたトラウマの謎を解明していくことになります。物語は4章で、それぞれの登場人物の視点から書かれており、前述の大きな謎2つが3章までで明かされます。そして最後の4章では、いずれの謎にも直接関わっていなかった人物の視点からつづられており、実は彼女の夫ががんで余命いくばくもないという、今抱えている大きな問題を読者に知らせることになります。3章までは過去の話、そして4章で「今」起きている話を描くというコントラストが特徴的です。
夫婦同士でもない友人同士の旅行ということで、少し修学旅行のようなわくわく感も感じられる小説ですが、そこはある程度年齢を重ねた主人公の事、泊まるホテルはリッチなリゾートホテルだったり追加代金をかけて上級クラスの船を使ってしまうあたりが憎い演出です。同じく「ただ歩きながら話をする」設定(こちらは高校生が主人公)の、「夜のピクニック」(新潮社)と読み比べるのも楽しいです。
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