レキシントンの幽霊のあらすじ・作品解説
『レキシントンの幽霊』は1996年に「群像」に掲載された村上春樹による短編小説である。これを表題作とする短編集も同年に文藝春秋より刊行されており、その際には雑誌掲載時のものに加筆修正されたバージョンが収録された。2014年に三省堂『精選現代文B』など高校の国語の教科書に採用された作品である。 この物語はフィクションでありながら作者自身の体験を基に作られた話であり、マサチューセッツ州に暮らす「僕」が読者に語りかけるような口調で進んでいく。マサチューセッツ州に住むようになって2年ばかり過ぎた頃、「僕」は建築士のケイシーという男と知り合いになる。ケイシーはボストン郊外のレキシントンに住んでおり、ある日1週間ほど家を空けるから、と「僕」は留守番を頼まれる。「僕」はケイシーの持つレコードコレクションに興味があったので快くこれを受け入れるが、留守番初日の夜に誰もいないはずの階下から人のざわめく気配を感じ、1階の居間へ降りていくとそこでは得たいの知れない人々のパーティーが行われていた…。
レキシントンの幽霊の評価
レキシントンの幽霊の感想
村上春樹の短編集
村上春樹の短編集。とても読みやすく、話も面白い。ただ、表現はやはり、村上春樹的なので、苦手な人には向かない。私も読みはじめてから数十ページたつまで、いろいろむずがゆかった。タイトルになっている、レキシントンの幽霊はすごく面白かった。アメリカにすんでいたとき、知り合った男に、1週間、家の留守番を頼まれる。その家で、夜中、幽霊がパーティーをしているという話。死を受け入れるためか、家族が死んで眠り続けるという記述もある。村上春樹は、死など、「失われたきり、もう二度と戻ってこないもの」についての話が本当に好きだな、と思った。どの作品を見ていても、そういう、諸行無常的な記述がある気がする。
やはり秀逸
なんとなく敬遠していた村上春樹さんでしたが、本書を購入しました。一気に読み終えました。こんな気軽に読める短編集もとても面白いですね。ストーリーが素晴らしい。余裕な時間がない時にやっぱり短編のほうは読みやすいと思いますね。本書の描写は不思議な気分になりますが、とても奥の深い作品です。いろんなことを考えさせられました。読後はとても優しい気持ちになります。人のつながり、自分の内側、いろいろな意味で自分を見つめ直すいままでにない内容でした。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。村上春樹の独特の世界観が好きな方にはとても楽しめる内容です。
-----短編------
村上春樹の短編はどれをとってもハイクオリティです。独特の世界観にいつのまにか引き込まれていきます。本のタイトルに『レキシントンの幽霊』を選んだり、「底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録」と紹介したりしていますが、そのようなホラーじみた作品集ではありません。全体を通して感じられるのは「孤独感」です一番印象に残ったのは「沈黙」と「七番目の男」だった。人の悪意ほど恐ろしいものはない。一人の人間の悪意が多くの人たちを動かしていく。そしてその悪意が特定の人間に向けられたとき、悲劇が始まる。「七番目の男」の主人公は、少年の頃に親友と海を見に行くが、突然の大波に親友をさらわれてしまう。迫りくる大波から親友を助けることができたかも知れないのに、彼は恐怖にかられて自分だけ逃げてしまった。以降、彼は波の恐怖と自責の念にさいなまれながら生きていくことを強いられる。それから、「氷男」の悲しさと、「トニー滝谷」...この感想を読む