チルドレンの感想一覧
伊坂 幸太郎による小説「チルドレン」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
素直な気持ちが、当たり前の奇跡を起こす
爽快が持ち味の伊坂作品のなかでは、異色作伊坂幸太郎は不思議な作家だ。ごくふつうの、日常を描いた小説のなかにミステリーを落とし込んでくる。しかも登場人物に罠を仕掛ける訳ではなく、読者へ直接罠を仕掛けてくるのだから厄介で小にくたらしい。いたずらのように悪質で可愛らしく、難解で深い。それでも、仕掛けられた方は「やられた!」と爽快な気分になるから不思議なのだ。まるで一休さんにでも騙された気分。もしくは、足払いにかかって思いっきり床にたたきつけられたら、仰ぎ見上げたそこに天井はなく、青空が広がっていた、そんな気分。だから筆者は伊坂作品のことを、青空ミステリーだとか一休ミステリーだとか勝手に呼んでいる。しかし、『チルドレン』はじゃっかん、他の作品とは趣が異なる、と筆者は思っている。と、いうのも、『チルドレン』は短編連作でありながら章をまたいだミステリーがないからだ。『砂漠』のような章をまたいだ仕掛...この感想を読む
短編ながら読み応えのある一冊。
破天荒な男、陣内君を中心に展開する5つの短編集。短編集でも時系列が交互に登場して、それぞれの話が少しずつ繋がっていてそこがまたおもしろく、長編のような味わいになっています。想像を超える無茶苦茶加減、破天荒男の陣内君。最初は理解出来ないと思っていたけれど、最後には、にんまりかっこいいって思ってしまいました。陣内君の他に登場人物のキャラが濃くさらに話を面白く引き立てていて、。本作はトリックよりもキャラの印象が強かったです。家裁の調査官という設定にもとても興味がわきました。肯定感に溢れている世界に浸るのもたまにはとってもいい感じです。大人がかっこよければ子供はぐれない・・なるほどです。
子供の心のままに
五つの短編からなる一つの長編小説。その物語の中で不思議な存在感を放つ男「陣内」彼こそがが物語の主人公であり「チルドレン」なのである。読み進めていくうちに彼の傍若無人な行動、破天荒な言動、それらに最初は登場人物と共に読者も彼に振り回されることになる。しかしいつの間にか彼に魅力を見出さずにはいられなくなるのである。伊坂氏のキャラクターの中で彼が一番好きかもしれません笑 そう思わせる程今作では伊坂氏らしさを存分に発揮されたキャラクタをもつ人物だと思います。彼の台詞はいつもめちゃくちゃで、でもどこか考えさせられるようなところが必ずあって…こんな人が友達にいたらやっぱり振り回されるんだろうなと思うけれどいたらきっと人生を変えてくれるようなやつ。それが「チルドレン」である陣内なのです!中年になっても褪せない子供らしさを持つ彼はあなたに力を与えてくれるでしょう。
活字離れのあなたに効く、小説の喜び
「活字離れのあなたに効く、小説の喜び」とは、帯に書いてあった謳い文句だけれど、本当にその通りだと思う。この小説は悪いところを挙げるほうが難しい。連作短編集で、一番要となっている登場人物・陣内が主人公になっている話が無いのに、彼の魅力がどんどん伝わって来る。読み進むにつれ、言ってることもやってることも無茶苦茶な彼が何をやらかしてくれるのか楽しくなって来るし、そんな彼のバックボーンが分かって来るのも面白い。それに対してツッコミ役になる鴨居や武藤も良い。(鴨居が一番好きかなぁ)時系列が交錯していて、伊坂ワールドは本当に構成の妙が冴えわたっている、ということまで感じさせてくれる一冊だと思う。