今でも呼吸するように思い出す。季節が変わるたび、一緒に歩いた風景や空気を、すれ違う男性に似た面影を探している。
工藤泉
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ナラタージュは書き下ろしで2005年に角川書店から出版された小説である。作者が島本理生で、15歳で芥川賞候補に残り、野間文芸新人賞の受賞歴もある。本作品は、第18回山本周五郎賞候補に選ばれ、この恋愛小説がすごい!2006年版では第1位に選ばれたことにより人気にがさらに上がり、23万部を売り上げるベストセラーとなった。また2006年放送の、王様のブランチというテレビ番組で本作品の特集が組まれ、作者が出演した。 この小説は大学2年の二十歳である主人公が、高校時代に片思いしていた先生からの久しぶりの電話によって揺れ動く、不器用で純粋な激しい恋を描いた恋愛小説である。タイトルは映画などで、主人公が回想の形で過去の出来事を物語ることを意味する。これは作品とリンクしており、過去の先生に対する想いと二十歳になった時の想いが交錯している。 若い女性が主人公で著者も若いと言うことから、同世代の女性の共感を得た作品である。
島本理生、初の書きおろし作品!本作は2005年に発行されている。島本理生にとっては初の書きおろしで、執筆開始当初に予想したより枚数が大幅に増えてしまったらしく、読者が呼んでくれるか心配した、というエピソードが残っている。しかし出版されるとすぐにヒットし、2006年、宝島社の「この恋愛小説がすごい!」で第1位という評価を得た。読んだ後で知ったのだが、近く映画化もされると言うことで、今後も彼女の代表作という扱いの作品であることは疑い得ない。作者が書きたいことを、すべてを凝縮し(中略)たら、この本になりました、というこの時期の彼女を表す一作でもある。わたし自身の感想としては、主人公二人の恋愛の描写や顛末は秀逸、しかし脇のキャラたちが上手く主題に絡めず邪魔、というところだ。以下で詳細に分析していこう。 ○○賞候補が多い島本理生本作は山本周五郎賞の候補作になったものの、大賞は取れなかった。上記の...この感想を読む
読み進めば進むほどダルダルで、正直しんどかったです。途中で読むのを止めればよかったです。高校教師の葉山先生と元生徒で女子大生の泉の不毛な愛。だらだらとプラトニックな関係が続くと思いきや、体の関係を持って思い出作って終了。っと思いきや、ラストは社会人になった泉がようやく人生を共にするパートナーと新しい道を歩みだすところに、ひょんなことで葉山先生の影がちらつき、想い出が溢れてしまうという…。美しい終わり方でしたが、私は最後の最後までこの作品に全く同調できませんでした。ただし、こーいう落ち着いた純文学っぽい文体は好みなので、著者の他の作品に期待します。
この作品は文章や言い回しがすごくキレイで読みやすいです。うまいな、と思います。ただ、内容は賛否両論あるんじゃないかなと思います。主人公目線でみれば、すごく切ない純愛の物語、主人公の彼目線だと苦しいだけの恋愛、先生目線だといやなことからの逃げ道。第三者目線だと、道を外した痛々しい恋愛模様。どこに視点を置くかで内容への理解もまったく違うものになります。ただ、先生をズルイ、彼をヒドイ、と一概に言えるものでもなく、だからといって主人公がすべて悪いわけでも、いいわけでもない。人の気持ちはいつだって正しくはいられない、歯車が少しずつずれた結果だったんだと思います。いろんな目線からこの本を読んでみるのも面白いと思います。人間、誰だって正しくはいられません。ダメだとわかっていても止められない気持ちはあると思います。
よみがな:くどういずみ 性別:女性 国籍:日本 住まい:1人暮らし 特徴:高校の演劇部の手伝いを機会に止まっていた葉山との関係が動き出す 価値観:葉山のずるい態度に失望 物語上での目的:妻が帰って来る身で行為におよぶ葉山に違和感を感じ関係の終結を求めた 学年:大学2年生 専攻:国文学 両親:父の仕事のためド...
よみがな:つかもとゆずこ 性別:女性 国籍:日本 所属:演劇部 特徴:学校に張り出す演劇公演を告知するポスターに絵を描くことになる 特技:絵を描くこと 物語上での目的:歩道橋の上から飛び降り自殺をはかる 学年:高校3年生 部活:演劇部を引退する 家庭:母子家庭
よみがな:おのれいじ 性別:男性 国籍:日本 所属:理系(生物系)の学部 特徴:大学生 出身:長野県 サークル:演劇サークル 担当:トロンボーン 音楽:新旧洋邦問わず造詣が深い 高校時代:ブラスバンド部
工藤泉
この台詞は冒頭ででてきます。 婚約した男性と話をしているシーンです。 この台詞にでてくる彼とは婚約した男性のことではありません。 彼女が深く愛していた男性のことを冒頭で、今でも思い出す。と話しています。 呼吸をするように思い出すとは、常に頭にあるということ。 好きだが一緒にはいられなかった。 片思いの心情にとても近いと思います。好きな人を想う切ない気持ちをこの台詞が伝えてくれている気がします。