四つの署名のあらすじ・作品解説
「四つの署名」はイギリスのアーサー・コナン・ドイル作のシャーロック・ホームズを主人公とする推理小説である。長編小説としては2作目に当たり、1890年にアメリカのリピンコット・マガジンに掲載された。長編小説の「緋色の研究」、「恐怖の谷」と同様に、ホームズが解決した事件と過去のいきさつの2部構成になっている。 モースタン嬢が事件の依頼に訪れた。インドに派遣された彼女の父が10年前に行方不明になってから、真珠が送られるようになり、送り主から直接会いたいと言ってきたことにより、ホームズとワトスン博士が同行する。送り主に奇怪な話を聞かされ、殺人事件が発生し、義足の足あととともに、4つの名前を書いたものが残されていた、と事件は進展していくのである。 解決後にモースタン嬢がもらえるはずの財宝はテムズ川に沈められて得られなかったが、彼女に惹かれていたワトスン博士は喜んでプロポーズする。財産目当てに結婚を申し込むと邪推されるのが嫌だと考えたからである。二人は結婚し、ホームズとの共同生活は解消することになる。
四つの署名の評価
四つの署名の感想
ホームズ大丈夫ですか
コナン・ドイルはホームズをどうしようとしたのかわかりませんが、冒頭はホームズ完全に廃人になっています。ワトソンも力関係的に強くは言えないっぽいですね。良い時も悪い時も一緒、それが夫婦・・・いやこのコンビの結束の強さでしょうか。とにかくここから後半の名推理や手に汗握る大胆なアクションへとつながるとはとても思えないほどホームズは穏やかに荒れています。しかし、依頼者の語る奇妙な話にもりもり元気を取り戻すげんきんなところが結構可愛いです。印象的なのはボートのシーンです。このシーンはアクション映画のようで映像が浮かんでくるような名シーンだと思います。
裏に潜む真実と息もつかせぬ冒険
うら若き女性メアリーのもとに、なぜか毎年届いてくる真珠。差出人が不明でもあるし、真珠を送られるような覚えもない。不審に思ってホームズとワトソンの所に相談に訪れたことから物語は始まります。正体不明の相手はメアリーとの面会を求めてきており、不安に思って二人の力添えを仰ぎます。面会相手との会談で明らかになったのは次のようなことでした。メアリーの失踪した父はかつてインドに勤務しており、現地で発見された宝をめぐる因縁があり、その争奪戦をめぐって様々な騙し合い、殺人まで行われていた。メアリーが財宝を受け継ぐ権利があるという話になるところが、インドでその財宝に関係する四人の当事者と戦いになる。ここがタイトルの四つの署名とつながり、謎を解決するさなかにホームズ的な冒険物語へと進んでいくのが醍醐味です。何よりこの長編はワトソン博士の身の上に大きな変化が起きるのがファンにとっては見逃せません。この感想を読む
ホームズシリーズ二作目の長編
『緋色の研究』に続くホームズ作品の二作目の長編である。そのつながりで、今回久しぶりに読み返したのだが、やはりホームズ作品は短編集の方が個人的には好みである。本作は、当時イギリスの植民地だったインドにおける反乱を背景にした財宝を巡る欲望が引き起こす殺人事件である。そういう歴史背景があるのは、長編ならではだが、クライマックスで長い説明があるのが、やや冗長に感じなくもない。また、事件の依頼人とワトスンの恋愛話も、特に必要性を感じない。作者は、シリーズ化にあまり乗り気ではなかったのだろうか?と勘ぐってしまう。ホームズ作品は決して嫌いではないが、お薦めは短編集である。