遠まわりする雛のあらすじ・作品解説
遠まわりする雛は2007年に角川書店から刊行された米澤穂信による短編小説で、『古典部シリーズ』の第4弾にあたる作品である。長編小説だった前3作に対し、文芸誌に掲載された短編と書きおろし1作を含むオムニバス形式の短篇集となっている。 古典部の高校1年1学期から春休みまでの出来事が書かれていて、前3作のストーリーを補うような構成になっている。「やるべきことなら手短に」と「大罪を犯す」が『氷菓』の間、「正体見たり」が『氷菓』と『愚者のエンドロール』の間、「心当たりのあるものは」以下の4篇が『クドリャフカの順番』の後の話になる。表題作は折木奉太郎が千反田えるの頼みで、地元の祭り「生き雛まつり」に参加する。手違いにより開催が危ぶまれる事態となるが、千反田えるの一声で無事執り行える用になる。なぜ手違いが生じたのか奉太郎とえるは真相を推理する話である。 この作品を含む『古典部シリーズ』は『氷菓』というタイトルで2012年にテレビアニメ化された。
遠まわりする雛の評価
遠まわりする雛の感想
目次別レビュー、芸達者な作者!
やるべき事なら手短に。奉太郎の才能の目覚め。古典部シリーズ第4巻なのにも関わらず、入学してから間もない時の話だったので当然驚きました。この頃から、奉太郎の推理の方向性が見えますね。奉太郎が重視したのは、千反田えるを納得させる事でした。正直に言って流石は省エネ主義です。しかし面白いのが、千反田えるるを納得させるということは、辻褄を完全に合わせないといけないということ。そうなると、辻褄が完全にあった推論=実際に起こった事実になってしまうんですよね。奉太郎の推理はここから更に開花していくわけなのですが、やはりはじめということもあって、里志の協力を仰いでの完結となりましたね。個人的には、もし奉太郎が真面目に女郎蜘蛛の会と知恵比べをしたら。という展開があってほしかったです。大罪を犯す。軽いのに奥が深い良質な謎。この回で私が気に入った点は、問題自体は極めて簡単な謎だというところです。αとdは確かに似て...この感想を読む
あぁ高校生活
神山高校「古典部」の部員、折木奉太郎と、部員であり親友の福部里志、部長の千反田える、里志を恋こがれる伊原摩耶花の4人が繰り広げる、ちょっとしたミステリーの謎をといていくお話。この本には7編の短編が収録されていて、短編なのですごく読みやすいです。高校生活のちょっとした出来事や、冬休みの学校外での催しなど、青春をそこらじゅうに感じることができて、自分も高校生にもどった気分で楽しかったです。奉太郎のような省エネ主義がなんだかうらやましくもあり、省エネ主義なのに、周りに乗せられて謎をといていく過程が、仲間同士の会話で読んでいて私も仲間に入りたいと思わせるお話しでした。
まさに遠回り
「遠回りする雛」は古典部シリーズの短編集です。日常系の中の日常系という感じで、もうあまり謎解きという感じはしませんが、きっちりとミステリ要素はあります。きっとそれが作者、米澤穂信さんの信条なのでしょう。中身ですが、よかったです。ザ・青春!という感じが大好きなんです。また主人公がいい味を出していますよね。こう、最近は皆の関係に変化があるような伏線がちりばめられているような気がします。これからどう関係性が変わっていくのか・・・私、気になります。個人的にはもっとこの微妙な距離感を楽しみたいです!しかしくっついてほしいとも思う・・・なんとも言えない微妙なラインです。