クローズド・ノートの評価
クローズド・ノートの感想
最後は涙が出ました
上京してきて引っ越してきた日、あるはずないだろうと思いながらも少し、ほんの少しの期待を抱きながら引き出しを開けたり、棚の後ろをのぞいてみたり…そんなことをしてしまうくらい、先生の日記がすてきでした。先生は子ども思いな先生で、本当に私も香恵と同じくらい会いたかった。喘息持ちだけれど、一生懸命頑張っている先生を想像したら私も勇気と元気をもらえました。まさか亡くなっているなんて。先生のことを思って泣く子どもを想像するだけで泣けてきました。香恵と先生は似ていると思います。同じ職業を目指しているところ、同じ人を好きになってしまうところ。香恵と先生が出会っていたら素敵な友情が芽生えていたのでは、と思います。リュウと隆が同一人物と香恵が気付き始めたとき、ページをめくる手が止まらなくなりました。まさか、そんなことがあるなんて。隆に宛てた先生の手紙は、愛が溢れていて、文字を読んでいるだけなのに声が聞こえ...この感想を読む
文章力の高さが窺い知れるやさしい小説
雫井脩介氏の普通小説。この方は、うーん、心理描写が巧いなぁと、毎回思わせられるのだけれど、今作では主人公が天然ボケという設定が巧いなぁと。ちょっとヘンなことを言ってしまって、相手の反応がおかしいことに気が付いて「あっ」となる、というシーンがちょこちょこ挟まれていて、それが全然不自然ではない。そういう主人公に対する愛着みたいなものが湧いて、それが文章のとっつきやすさと相俟ってとても読みやすい小説だったように思う。しかし、話の設定はありがちと言えばありがちだし、先の展開もわりと読めてしまう。それでも最後まで読ませるのは、元々の文章力の高さ故だと思う。