インストールのあらすじ・作品解説
インストールとは、綿矢りさによる小説。著者にとってデビュー作であり、初めて書いた処女作にあたる。 主人公は受験勉強に疲れて登校拒否になってしまった女子高生・朝子。ある日、自分の部屋のものをすべて捨ててしまおうと思い立って行動していた朝子は、青木かずよしという少年と出会う。小学生ながらコンピューターの知識が豊富なかずよしは、朝子に風俗チャットのアルバイトをもちかける。最初はまともに文字すら打ち込めなかった朝子だが、徐々に夢中になっていき…というストーリー。 綿矢は、この作品で第38回文藝賞を受賞し、2001年に小説家デビューした。当時17歳の現役女子高生で、2003年には「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞したこともあり、累計発行部数は70万部を超えるベストセラーとなった。2002年の三島由紀夫賞の候補作にも選ばれており、選考員から高い評価を得ている。 2003年に漫画化、翌2004年には上戸彩主演で映画化されている。
インストールの評価
インストールの感想
高校生の壁
すべてにおいて価値を見いだす受験勉強に追われる朝子は突然何もかもがどうでもよくなり、部屋のものを片っ端から捨てます。大変な思いをしてまですべてを捨て去り、自分の身分である高校生、受験生という肩書までも捨てようとします。そこから物語は始まります。作者である綿矢りさも、このとき17歳という若さで華々しくデビューを飾ります。それに影響されて、昨年の芥川賞受賞者である羽田圭介先生が感化され、黒冷水でデビューするのですが、それは別の話になるので割愛。高校生の心情を生々しくリアルに表現できるのは、やはりリアルを生きている作者だからこそだと私は思いますが、本人は決して登場人物に自分を反映させるということはしないそうで、登場人物=作者と思われることに戸惑いがある、と大物作家さんとの対談でおっしゃっています。なので、主人公の心情が作者自身感じたリアルな感想ではない、けれど、思ってもいない焦燥感を自分のも...この感想を読む
ネットチャット
最近話題になっている若年芥川賞作家の作品です。確か最年少だったか。舞台となるのは「ネットチャット」といった現代の若者の象徴と言ったようなもので、少し好き嫌いの分かれるものか、どうだろうか。と思って手にとって読んでみるとやはり話題になるだけあって面白い。同作者の「蹴りたい背中」の方も続けて読んでしまった。好き嫌い。と言ったがそんな事はまったくなかった。若年作家に良く見られるキャラクターを通しての強い自己主張がないことがまず大きい。若年の学生作家がレーゾンデートルを求めて小説を書いて作家になってしまった…タイプではまったく無い。しかしこの小説は女子高生であるからこそ書けるような切り口で思春期の複雑な心の機微を描きます。詩を思わせるようにリズムよく書かれる文章はとても読みやすく自然で身に溶けていくようでした。
漫画を読んでから読みました
漫画を読んで、面白くて、原作が気になり読みました。綿矢さんは、学校生活に馴染めない子の心理描写が上手だなぁと思います。『蹴りたい背中』でも上手いと感じました。学校に行かなくなったら、世界は狭くなっていくんだなぁと感じたり、なかなか考えさせられる一冊です。自分で自分の殻を破るしか方法はない訳で、その過程もなかなか丁寧に描かれていて良いなぁと思いました。少し物足りないような気もしますが、著者が17歳の時の作品ですし、時代がそういう時代だったのかなぁと思います。あっさりした物語が流行っていたような気がします。漫画になったり映画になったりしてまた違った面白さが発見される作品かもしれません。