恋愛中毒の評価
恋愛中毒の感想
悪い意味での女らしさ
恋は人を狂わせる本作のテーマはこれに尽きると思う。主人公の水無月は、離婚経験から恋愛はもうしないと決心しているが、タイトルからも察せられるように、その誓いが守られることはない。離婚後に水無月が恋をしたのは、相手は水無月より二十ほど年上の、傍若無人で女癖の悪い金持ちで妻子持ちのタレント兼作家・創路である。かくいう私(この文章を書いている筆者)はこの男の魅力にはいささか同感しかねるが、彼が物語において水無月を狂わせる存在となる。だが、物語の早い段階でも、創路の魔性というより、水無月の性格に原因があることは明らかだった。離婚経験という明白な事実だけでなく、読書や他人への探求など、彼女の集中力及び没頭力が強いことは文章の中で繰り返し示唆されている。それでいて仕事には精を出せず、人付き合いが苦痛、というのも、排他的な彼女の性格をよく表していた。基本は排他的であるからこそ、心の内側に入った人や物に...この感想を読む
自分の感覚を捨てて他人の恋愛を見つめるおもしろさ
構成の巧みさ冒頭、社内で後輩たちに疑いの視線を向けられる、謎のおばさん的な雰囲気を水無月に漂わせただけで、物語は年月をさかのぼり、創路功二郎とのエピソードが始まります。そして約200ページも語られた後、彼女のあれ?と思わせる部分がやっと見えてくる、というこの構成の力に読者はみんな引き込まれるのではないでしょうか。恋愛という言葉から想像するイメージは幸せなことだけではないけれど、このタイトルは少なくとも誰かを愛する幸せを知った女性の話だろうと思わせ、油断させてから見せられる彼女の猟奇的な部分はより衝撃的です。もし、彼女の性質を垣間見れるようなヒントが散りばめていたら、創路との恋愛に気持ちが揺れ動く水無月の気持ちに覚える共感も、不器用な部分や抱えている不安に応援したくなる気持ちも薄れて、これから動くストーリーに警戒したかもしれません。大学時代に関係を持った荻原への彼女の行動に違和感を持って...この感想を読む