一千一秒物語のあらすじ・作品解説
「一千一秒物語」は稲垣足穂による短編小説集である。 稲垣足穂が昔から書きためた200本程度の短編があり、そのうちの何本かをおさめたものがちくま文庫や新潮文庫で発売されている。 「お月様」「ほうき星」「シガレット」「太陽」などのきらきらとした明るいモチーフが頻繁に登場し、お月様に追いかけられた話やポケットから自分を落としてしまった話、自分がお月様を撃ち落してしまう話などなど、抽象的で現実離れしたものが多い。童話やファンタジー、幻想文学的な要素もかなり含まれている。 1969年に新潮文庫で刊行された本作には「チョコレット」「星を売る店」「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」など全部で9編が収録されている。 なお、本作はお笑い芸人であるピース又吉の「ピース又吉がむさぼり読む新潮文庫20冊」「ピース又吉が愛してやまない20冊」にも選ばれている。 また絵本にもなっており、稲垣足穂の文章をもとに、たむらしげるがCGイラストを描いた。
一千一秒物語の評価
一千一秒物語の感想
足穂とたむらの世界
稲垣足穂の代表作である『一千一秒物語』に、イラストレーターのたむらしげるが絵をつけた、絵本版・一千一秒物語だ。もともと、たむらしげるは稲垣足穂の作品に影響を受けていたそうだが、たむら氏の素朴なタッチのイラストに、足穂の世界観はなるほどよくマッチしている。たむら氏の作品はそもそも、『ファンタスマゴリア』や『銀河の魚』などに代表されるように、少しシュールだがどこか懐かしい作品が多い。足穂の作品も、ベースは『当時の最先端科学』でありながら、どこか奇妙なシュールさを持っている。二人の作家に共通する『飛躍した非日常性』がそうさせているのではないだろうか。たむら氏のイラストで、どっぷりと一千一秒物語の世界に浸って欲しい。