風に舞いあがるビニールシートの評価
風に舞いあがるビニールシートの感想
我々は世界の悪夢を前にして、何ができるのか!
直木賞受賞作!森絵都は文芸春秋社のインタビューで本作についてたずねられた時、何かを守ろうとしている人たちの話を集めた小説集が書きたいと思った、と語っている。表題作だけでなく小説集として2006年に直木賞を受賞している。当時の選者は、彼女の調査の緻密さとそれを纏めるテクニックを絶賛している。これ以前の作品であるいつかパラソルの下でが候補に挙がったのみで終わっているので、満を持しての受賞、という言えるかもしれない。一方、児童文学から一般文芸に転向して二作目での受賞が奇跡的に早い、と言われる場合もある。私はこの早いという論調には異を唱えたい。直木賞は確かに歴史ある賞ではあるが、言うなれば文芸春秋誌を販売するための商業性が高い賞である。それならば、彼女が児童向けという一つのジャンルで築いてきた実績を舐めるべきではない。対象年齢が低いからといってそれを生み出すのが楽ということはないのだ。セールス...この感想を読む
様々な人間関係を描いた作品です
七つのお話が一つの本に収録されています。内容としては、いろんな場所で繰り広げられる現実的な人間模様が中心です。天才美人パティシエに翻弄されるアシスタント、犬を救うボランティア活動の資金を得るためにスナックで働く主婦、レポートの代筆のスペシャリストを探す社会人大学生、などなど。どれも現実にありそうで、身近な話ばかりです。 最後に収録されているのが、この本のタイトルにもなっている、「風に舞い上がるビニールシート」です。国連の機関で働く元夫婦を描いた作品となっているのですが、いい意味で世界の現実に無理矢理目を向けさせられます。平和とは、人間と人間の交流とは、いったい何が正解なのだろうか、と深く考えさせられました。 こんな世界があれば、あんな世界もあるんだよ、と教えてもらったような気がします。