人生はたった数十年。長いホームステイだと思えばいいんだ。
天使プラプラ
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口の悪い天使が目の前にやって来てあなたは当選しました。という。何のことだかさっぱりわからない。というか、ぼくは魂、ぼくは誰?何でここにいるの?前世でおかした罪を償うために小林真となり、現世で生活しろ、という天使。そして自分の現世を思い出せればよいという。詳しいこともわからないまま魂は真となって生活することになってしまった。目を覚ますとそこは病室だった。どうやら真は自殺をはかり生死をさ迷っていたらしい。そこには家族がいてなんだかよい家庭の雰囲気が感じられた。しかしそれは表面上のこと。真を死に追いやった原因はこの人たち家族にもあったのだ。浮気、好きな女の子の別の顔、兄とのわだかまり、それらすべてが真に襲いかかり、自殺に至ったのだという事実を知る。そんな真の唯一の取り柄は絵を描くことであった。彼は美術部に所属し絵を描いていた。そこが真となった魂の鍵を握る場所であった。そうか!気づきと共に雷の...この感想を読む
面白かった。とても驚いた。こんな見方、こんな生き方もあるんだ、というのが目からウロコで。最初は、主人公が勝手にお金を使ってしまったりとか、やりたい放題やるのがハラハラするというか、大丈夫なのか?? と心配しながら読んでいて、「まあでも他人のだし」、というのが錨のような役割を果たしていて、だから大丈夫と読み進めてラストでのどんでん返し。そして、ホームステイしているようなものだと考えればいい、というくだりでさらにびっくりした。確かにそんなふうに考えれば、人生何をやってもいいような。その瞬間、自由という概念を身を持って体験したような。実際そんなふうに生きるのは大変なことだと思うのだけれど、深く考えさせられた。
作者の森絵都はシナリオライターだったこともあり、文章は読みやすく幅広い年齢の人が読める小説だと思います。死んだ中学生の男の子が下界の人間の体を借りて、前世で犯した罪を思い出していかなければならない。思春期ならではの家族や友人、恋愛そして自分のことについてのとらえ方を描いた内容となっています。自分のその時代のことを思い出し、懐かしい甘酸っぱいような気持になりました。また、人生いろいろで境遇も様々。人はそれぞれ自分の色を見つければいい。そんなことを教えてくれる勇気のでる作品です。大人が読んでも楽しめるのですが、中高生時代に読むのがぴったりな物語だと感じます。
天使プラプラ
自殺した主人公が、やり直しの機会を得た時