差別されるのがどういうことなのか、それがどれくらい深く人を傷つけるのか、それは差別された人間にしかわからない。痛みというのは個別的なもので、そのあとには個別的な傷口が残る。
大島さん
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海辺のカフカは村上春樹の10作目の長編小説であり「ねじまき鳥クロニクル」に次ぐ枚数の大作、2002年9月12日に新潮社より上下二冊で発刊、また2005年3月2日に新潮文庫として文庫化された作品である。 2005年にフィリップ・ガブリエルにより翻訳された英語版はニューヨーク・タイムズ紙で年間の「ベストブック10冊」、およびアメリカ合衆国の文学賞でもある世界幻想文学大賞に選出された。 物語は二つのパートから構成され、奇数章では15歳になったばかりの「僕」田村カフカが家を出て、四国に向かい数々の試練に立ち向かう。偶数章では、もう一人の主人公・ナカタさんと星野青年が四国へ向かう物語が進行していき、最終的に二つの物語が交差する展開になっている。 2002年9月12日から2003年2月14日までの期間限定で本作のホームページが設けられ、世界各国から質問や感想が寄せられ、それらは2003年6月10日発刊の「少年カフカ」に掲載された。 演出家・蜷川幸雄によりこれまでに2度、舞台化されている。
考察のための事前情報村上春樹2002年発表作品、長編としては10作目に当たる。前後の長編としては「スプートニクの恋人」、「アフターダーク」村上氏は前作「スプートニクの恋人」執筆の際にそれまでの村上春樹的比喩表現をこれでもかと書き、そのあとは書き方を変えて行く、と宣言している。「スプートニクの恋人」でもそれ以前と作風の違いを感じたが、本作では更に過去作品のイメージを払しょくする挑戦をしているように思う。以下、その挑戦とそれに対する私なりの評価考察を記述する。新たなるキャラクター像本作に関しての様々なインタビューで村上春樹は主人公を15歳にする事は最初から決めていた、と語っている。過去作は未成年の主人公はほぼいない。あえて言えば「ノルウェイの森」のワタナベは作中で20歳になるので未成年の時期が語られてはいるが、彼はある程度人格形成が固まりつつある若者として描かれており、現役中学生であるカフ...この感想を読む
村上春樹の代表作のひとつである「海辺のカフカ」の下。蜷川幸雄の演出で舞台にもなった。主人公は孤独癖のある少年。村上春樹の作品は、友達のすくない男の子が主人公であることが多い気がする。でもどことなくおしゃれで、粋なことをするけど気取らないっていう感じ。彼が偽名として使用するのが、フランツカフカからとられた、カフカ。猫探しが得意なナカタさんがかわいい。「~であります」という口調もよい。キャラクターのひとりひとりが個性的で面白い。カーネルサンダースも出てくる。ふたつの物語が同時進行するストーリー。最後は同じところで混ざり合い、終着していく。
この本はとてもおもしろい。皆さんは読むと村上春樹の人気の高さの理由はすぐにわかると思います。そんな偉い作品を支えているテーマそのものが素晴らしい。田村カフカ少年の話とナカタさんと言う数奇な運命をたどる老人の話が平行して進みます。この二人の話が交互に進み、一見何の関係も無いように見えた二人に接点ができ、不明な点を残しながら二人とも別々なアプローチで四国の高松のある場所へ向かいます。二人ともお互いにお互いの存在も知らず、物語は段々収束の方向に向かうように見えます。もしかしたら、カフカ少年=ナカタさんではないかと思いながら読み進むうちに下巻へ。。。
大島さん
高圧的な思想集団の使者に対して怒りを抑えきれなかった理由を主人公に語るシーン。大島さんは性同一性障害であるために差別されてきた経験があり、想像力の欠如がもたらす暴力的な行為を許せない。
大島さん
家出をしたカフカが、多くのものを失いながら、新しい得るために家に帰ることを決め大島さんの別れのシーン