もしかすると、不安さえなければ迷子は案外楽しいのかもしれない
オーリィ
理解が深まる小説レビューサイト
小説レビュー数 3,368件
それからはスープのことばかり考えて暮らしたは、吉田篤弘原作の小説作品である。この小説は暮しの手帖社発行の「暮らしの手帖」で連載されたものを単行本化したもので、単行本版は暮しの手帖社から刊行された。しかし文庫版は中央公論新社より中公文庫で刊行されている。 この作品は、月舟町という町を舞台に、この町に引っ越してきた青年オーリィと彼に関わる人々との交流や日々の暮らしが描かれた、ゆったりとした温かいふれあいの物語である。個性豊かな登場人物たちは、アパートの屋根裏に住む大家のマダム、トロワというサンドイッチ屋さんを切り盛りする安藤さんとその息子のリツ君、緑の帽子をかぶった美味しいスープの秘訣を教えてくれる初老の女性など。また、この作品は月舟町シリーズの三部作の一つとなっており、このタイトルの他には「つむじ風食堂の夜」と「レインコートを着た犬」という作品である。また、月舟町シリーズの番外編として「つむじ風食堂と僕」という作品もある。
書店で見つけてタイトル買いしたくなる立ち寄った書店でふらふらしていたら、この本を見つけて思わず買ってしまった。タイトルの「それからスープのことばかり考えて暮らした」という言葉のくすぐったさが心地良くて嬉しくなったから。実際、この本は休日の喫茶店でのんびり読むのにはうってつけの本だった。主人公の若い青年オーリィが出会う人々と、古い小さな映画館とサンドイッチとスープのお話。オーリィの目線から見る街の情景は、オーリィののんびりして優しい内面から映し出されているからすべてがほんのり温かい。毎日仕事で急かされているとこういうものが見えなくなってくるから、本を通じて思い出させてくれるのはありがたいと思う。オーリィが古い映画館で何回も見たはずの映画を見ていると、隣の女性からスープのにおいがしてくる。彼はポップコーンを食べているけれど、ひどくお腹がすいてくる。それから彼はスープのことばかり考え始める。...この感想を読む
まず、タイトルが素晴らしい。このタイトルだから手に取った、みたいなところが多分にある。それに装幀。さすが吉田篤弘・吉田浩美ご夫妻だなぁ、というか。全体を通してとにかく雰囲気や流れる空気が良くて。こんな本はそうないんじゃないかな、と思う。簡単なあらすじとしては、新しい町へ引っ越してきたオーリィ君が、安藤さんのサンドイッチのお店でスープを作るようになるお話。そこへ小さな映画館や元映画女優さんも絡んで。とてもおいしいスープができあがる。読めばきっとスープが飲みたくなる。肝心なこと(というかなんというか)が明かされないまま終わるのも良くて。「湯気もまた尊い」は名言。
誰にでも、記憶に残る料理というものを持っているだろう。あの人と食べたあの料理、あの日にこれを食べた、そんな風に思い出の中にある料理や、これを食べるとあのことを思い出す、この料理を見るとあの人を思い出す、そんな風に料理から思い出や人の姿を蘇らせることもある。この作品は、そんな料理にまつわるエピソードを中心に作られた小説だ。主人公のオーリィ君と彼を取り巻く人々、そして、食べ物。オーリィ君はどうやらもともと食べることや食べ物に関心を持っていたようなのだが、ある日ふとしたきっかけで、『名前のないスープ』に魅せられてしまう。オーリィ君はそのスープを自分の手で再現しようと必死になるのだが――。食べ物に関する作品は、どれだけ読み手のお腹を空かせてくれるか、どれだけ読み手の食欲を刺激してくれるか、という楽しみがあるが、この小説は、料理の味や匂いではなく、それを取り巻く人々の雰囲気で、食欲を刺激してくれ...この感想を読む
オーリィ
迷子に前向きで、迷子になった分いろいろなものが見れた、という姉に対して。新しい景色は遠回り(迷子)した道にあり、いつもの「正しい道」ばかり歩いていてもその景色を見ることはできない。
安藤律
学校から帰宅した律という少年が、この物語の主人公(愛称オーリィ)に対してした質問。幼い頃に母親が亡くなってしまったが、自分の前からいなくなった理由を理解できなかった律が父親に母の行方を尋ねたところ、ぼやかした答えをされたことから出た疑問。