傷は、そこに人が生きていた証ですから
古道具屋の親父
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こんなにきれいな小説があるなんて種も仕掛けもございません。そこにあるのは、午後6時に開店するパリの裏町にありそうなビストロ風食堂。お客さんはいつも顔なじみばかり。この小説は、そんな月舟町の十字路の角にある、どこか懐かしい雰囲気のつむじ風食堂に集う“先生”と、お客さんを描いたたわいないお話だ。こんなにきれいな小説があるなんて。本作を読み終えて、最初に感じたのが、これだった。つむじ風食堂に出てくる料理―クロケット、ステーキ、オムライス、サーモン定食などなど―はとても美味しそうで、個性派揃いの登場人物―おしゃべりな帽子屋さん、イルクーツクへ星を描きに行きたい果物屋さん―も魅力的。“先生”と奈々津さんとのオレンジを交えた、いい大人の淡い恋愛も素敵。どこか遠くの離島にぽっかり広がった世界のようで、なんだかすべてが夢の中のつくりごとみたいで、最初から最後まで、やさしい言葉でていねいに紡がれた物語だっ...この感想を読む
これもまた実に吉田篤弘さんらしい作品。カバーデザインはもちろん吉田篤弘・吉田浩美ご夫妻ということで。カバーのデザインとも相俟って、世界観や流れる空気がやはりやわらかで静か。本当に夜だし、食堂だし。と言っても、人が集まっている、にぎわっている食堂とはまたちょっと違って。個性的な人たちが集まって、主人公として「雨降り先生」がいて。彼を取り巻く人々・物事のお話。映画化もしていて、八嶋智人さんがされているのはぴったりじゃないかと思っている。彼の父親が手品師だったというのも、物語に深い印象を落としている設定ではないだろうか。情景が難なく想像できるのが良い。
「あぁ...懐かしい」ボクはこのようなタイトルの本はまったく読まない。でも、何か「ミステリアス」な雰囲気を感じ、ボクがそのキーワードを好きなこともあり、手に取りました。「食堂の夜」?なんのこっちゃ??笑内容は、ド田舎の小さな小さな町のゆるーい日常がメインで構成されていた。かなり淡々としたストーリーである。つまり、まったく「ミステリアス」な部分がなく、文学小説のような夏目漱石のようなご老人がすごく好きそうな(偏見すいません)小説でした。独特の世界過ぎて、ボクにとっては読みづらい作品でしたが、この手が苦手なジャンルのかたでも、最後まで読める作品です。
よみがな:ふるどうぐやのおやじ
古道具屋の親父
主人公“私”の近所にある古道具屋の親父が、家具や皿など中古品を売りつけてくるときの文句。