陽炎の男の評価
陽炎の男の感想
大治郎の独り立ちと三冬の淡い恋
池波正太郎の『剣客商売』シリーズの第3作目です。『剣客商売』は老齢の剣客、秋山小兵衛を中心に、息子の大治郎や、小兵衛を慕う女剣士の三冬たち若者の活躍を描くシリーズです。この3作目では、真面目すぎて世渡り下手の大治郎が、少しずつ小兵衛のもつ清濁併せのむ世渡り術を身につけ、一人前の剣客として独り立ちしていく様子が描かれています。心配しつつも大治郎に任せる小兵衛と『父ならどうするだろう?』と考えながら行動を決める大治郎の姿は、こんな父子関係は理想だろうなあを感じるものがあります。また、この巻では、男装の女剣士である三冬が、淡い恋心を実感するようになるのです。しかも、その相手は大治郎! 大治郎の方はまったく気付いていないところがいかにも彼らしいですが……。2人の恋の行方を楽しみながら読める作品なので、時代小説は苦手な女性でも楽しめるシリーズだと思います。
読みやすい時代小説
著者、池波正太郎さんの小説はサラリと読める時代小説で、女性の方も読みやすいと思います。『鬼平犯科帳』シリーズも好きなのですが、この『剣客商売』シリーズの方が、文章が優しくて好きです。主人公、秋山小兵衛には40歳も年下のおはるという妻が居ます。小兵衛の人柄が好きです。年老いて剣の腕が立つところもカッコイイです。悪い奴らを倒していくところがスカッとします。この第三巻では、息子の秋山大治郎と佐々木三冬(後に大治郎と結婚します)との恋の進展やら、おはるを母親として大治郎が受け入れる瞬間等が書かれていて好きな巻となっています。テレビドラマも全て観ていたし、とても好きな作品です。