戦後という時代に生まれるべくして生まれた文学
家庭の中の男としての「太宰治」太宰治は、本当におもしろい。どうして私が生まれるまで生きていて、待っていてくれなかったのか、とさえ思う。私は本当に、彼と友達になりたいと、心底思ったものだ。「桜桃」を読み、そのついでに「ヴィヨンの妻」を読み、そして「父」、「家庭の幸福」、「おさん」を読むに至り、なんてまあワンパターンな作家だろう、と思ってしまった。これらの小説のテーマは、全部同じ、だめな父親とそのせいで悲惨な家族、そしてその父親の言い訳じみたアフォリズム、である。もちろんここに出てくる一家の主、ともいえないような父親は、太宰本人を投影したものである。そしてそこに描かれているだめっぷりや言い訳っぽい草子地、といえようか、作者の自意識の注釈は、読者をリラックスさせる効果を持っている。なんてだめな男なんだ、と怒りたくなるような部分もあるが、例の横やりの注釈を見ると、思わずあきれて怒りも忘れてしま...この感想を読む
4.04.0
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