堕落論のあらすじ・作品解説
堕落論は、1946年雑誌「新潮」に掲載され、翌年の1947年に銀座出版社により単行本化された坂口安吾の随筆・評論作品である。本作は戦後間のない時期に書かれたものであるにもかかわらず、現代においても多くの人に読まれ続けている坂口安吾の代表作である。 作品は戦後の荒廃した社会を切り開いたという意味で評価が高く、後身の多くの作家にも多大なる影響を与えており、日本の文学史においても重要な位置を占めている。本作においては「生きよ、落ちよ」ということがテーマになっており、敗戦によって混乱する社会における人々の堕落を冷徹に見つめ、人間の堕落の本質を穿とうとするという、当時の世相からすればかなりセンセーショナルな作品でもあった。 本作はまた多くの文学評論家からも高い評価を得ている。文庫版は角川文庫や岩波文庫など、複数の出版社から発行され、集英社文庫においては、漫画家の久保帯人によってカバー画が描かれたことでも話題になった。
堕落論の評価
堕落論の感想
生きることと堕落すること
「人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるのだ」坂口安吾の人間に対するどこか優しい目と、戦争で死ななかった人たちへの思いやりを感じます。特攻隊は生きて帰ってくることを恥としましたが、「人間」と言うのは特攻隊から帰ってきてから始まる、みっともないのが人間だ、生きていればみっともないのだと当時の日本人が言えなかったであろうことを言ってのけた、痛快な作品です。美しいものが美しいまま死ぬのも悪くはないけど、それでも一緒に年老いていきたかったと、早く死んでしまった人を想うときに感じる感じを、坂口安吾は見事に文章にしてくれたのです。短いけれど、とても読み応えがあり、生きているのも悪くないかと思いました。