限りなく重く限りなく暗い物語たち
時間を感じる表装の本この本を図書館で借りたとき、その本の古さに驚いた。記入式のカードを差し込むポケットがついていたりという懐かしい古さもあるのだけれどそれだけでなく、ページとページの匂いが昔の図書館でかいだものと同じだった。そうそう、昔の本はこんな匂いがしてたと色々なことが思い出された。記憶と匂いはセットになっているとよく言われるけれど、その通りだと思う。この本を読み始めるしばらくの間、過ぎてきた年に思いを馳せることができた。ちなみに初版発行が昭和46年だった。村上春樹の「ノルウェイの森」で永沢が、死後30年を経ていない作家の本は手に取らないという場面がある。そこで彼は「時の洗礼を受けたもの以外を読んで時間を無駄にしたくない」と言う。それはどこか不遜な態度さえ感じる言葉だったけど、時々その言葉を思い出す。そしてそれは決して間違っていないと思う。もちろん吉村昭が死んでからは10年程度しか...この感想を読む
4.54.5
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