少女という時代、遊女という運命
「変化」への、二つのきっかけ「たけくらべ」には、変化に至る「きっかけ」が二つ存在する。一つ目はやや軽く、二つ目は決定的なものである。まず一つ目は、美登利が祭りの日に女郎と罵倒されることだ。これにより前から意識していた信如を、さらに好きだと自覚するようになる。二つ目のきっかけは、「しばらくの怪しの現象」である。この現象をきっかけとして、美登利は少女時代と決別することになる。この「異常」についてもう少し考えてみると、「信如への思い」と「女としての自意識」という二つの意識に行き着く。「信如への思い」、つまり恋は、去る春に美登利が信如へハンカチを手渡そうとしたところから始まるが、彼女の心の中でだんだんと成長していった秘めた思いが爆発するのが祭りの日の「こちには龍華寺の藤本がついている」という長吉のセリフによってである。このとき長吉は美登利を「女郎」と罵倒しており、このことが美登利に、近い将来に...この感想を読む
5.05.0
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