あなたにここにいて欲しいのあらすじ・作品解説
新井素子の13冊目の本、23歳の冬に描いたお話、「あなたにここにいて欲しい」は、1984年に出版されたものである。1992年に、映画化もされたSFともサイコサスペンスとも捉えられる作品である。 核になるのは、子どもの頃から常に共に過ごしてきた2人の少女と、そこに突然現れて、2人の世界を壊してしまう2人の男女。何が本当で何がまやかしなのか、また、何が善で何が悪なのか。人の心とは何なのか。色々なことを問いかけられる気がすることであろう。自分の心の奥を覗いてみたいような恐ろしいような。誰でも隠している感情や、醜い部分があるはずなに、それが全て見られてしまう、見せられてしまう不幸。また、そうして隠していたものを見せつけられて初めて、本当の絆で新しい関係を結び直すことができる幸福。結局、幸福か不幸かは自分の心の捉え方、視野の持ち方だと結論づけて進んでゆく強さがラストを飾り、途中までの息苦しさは払拭される作品である。
あなたにここにいて欲しいの評価
あなたにここにいて欲しいの感想
ある男の子が静かに頑張る話。
表題作の「あなたがここにいてほしい」は、とても静かな物語だった。主な登場人物は、語り手となる吉田くん、そして親友のような又野君、そして吉田くんの好きな舞子さんの3人。幼稚園時代の吉田くんの話から始まり、又野くんと出会った小学生時代の話、又野君がヤンキーになった中学時代の話、又野君と別れた高校時代の話、そして時々に挟まれる舞子さんと出会った大学時代の話。どれも、少年のような素直な目で淡々と語られるけれどそれが静かで温かい感じで、ホッとする。他2編も良かった。1つは「LOVE or LIKE」に収録されていて大好きな話。もう1つは男の子って・・・って苦笑したくなる話。のんびりしたいときにオススメ。