摩訶不思議な世界へ引き込まれる
伊坂光太郎ワールド
時代が違ったり魔法使いが出てくるタイプではないのですが、ファンタジー小説だと言えるのではないでしょうか。小説は「欠伸が出る。人間からすれば・・・」と突然始まり、語り手が人間ではないことにまず驚きます。不思議な視点の小説が始まったと思っていると、「『ちょっと待ってほしいのだが』私はトムという猫に話しかけた」と、猫の回想話を「私」が聞いているという状況をやっと理解します。そこから、どうしてこのようになったのかという混乱を1つ1つ解決するために猫の話を読み進めていく私は、不思議に思いながらも耳を傾ける「私」と重なっていき、すっかり伊坂光太郎ワールドに引き込まれてしまいます。
猫目線の話の展開
猫の目線で摩訶不思議な世界の話が語られるため、そこの場で起こっていることを客観的な事実として受け止めることができます。猫目線の話の展開に慣れてきた頃に、話の中でネズミが猫に対して意見を主張する機会があり、まさかネズミが同じ言葉を話すことができるなんて、と猫が驚いたり、「むやみに追いかけまわさない」と約束はしても本能として飛びかかりたくなると書かれていることで、改めて目線は猫だったということに気付かされます。
話の収束
中盤以降まで不思議な世界だと感じていた話が、途中から権力者のドロドロとした思惑が徹底された世界だったということに気付き、少し現実の世界に戻ってくる感覚があります。しかし、それもつかの間、最後の最後で「私」はこの不思議な世界において巨人だったという事実が判明し、途端にファンタジーの世界に舞い戻されます。最後まで予想外の展開が待ち受けているこの小説は常にわくわくしながら読み続けられました。- あなたも感想を書いてみませんか?
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