誰かが誰かより辛いなんて、うそだ。誰だって同じくらい辛いんだ。生きることが辛くないやつがいたらお目にかかってみたいよ、おれは
清秀
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『風の万里黎明の空上十二国記』は小野不由美による「十ニ国記」シリーズの第4作目にあたる。「十ニ国記」は2015年時点で未完のシリーズであり、諸般の事情によっていくつかのレーベルから出版されている。以下、『風の万里黎明の空上』に関する出版状況を示す。1994年8月に講談社X文庫から出版され、2000年10月には講談社文庫版が再出版された。2012年、シリーズの刊行元の移籍にともない、2013年3月に新潮社から完全版として改めて出版されている。 物語は、主人公の陽子が慶国の王に即位してから1年後が舞台となっている。謀反により公主の座を追われ己の境遇を嘆く祥瓊、陽子と同じ海客でありながら正反対の人生を歩まざるをえなかった鈴が、陽子に対する嫉妬や羨望といった複雑な想いを抱えながらも、やがて慶国内で起きた反乱の平定を通して同じ道を歩んでいく。 アニメシリーズでは2002年10月から2003年3月にかけて放映され、シリーズ中最も長い話数でアニメ化されている。
十二国記シリーズのEpisode4である本作は陽子、祥瓊、鈴の三人の少女たちに焦点が当てられています。時間軸的にはEpisode1・月の影、影の海の続編にあたります。女王になった陽子は王としての責務を果たせぬ己に苦悩していました。突然公主という立場を失った祥瓊は市井の暮らしに馴染めずにいました。海客として蓬莱から流されてきた鈴は己の境遇を呪っていました。そんな住んでいる国も立場も違う三人の物語が別々に展開し、次第に交差していく様子は非常に面白くて下巻まで一気に読んでしまいました。三人それぞれの成長も見られて人物がとても魅力的に書かれていると感じました。
発売当初はライトノベルの文庫で出たにもかかわらず、圧倒的な世界観から後に講談社文庫で発売されることになった、「十二国記」シリーズ。アニメ化もされている、その4つ目のエピソードにあたります。苦難の末、王になった陽子。通常のファンタジーであれば、そこでめでたしめでたし……なのかもしれません。でも、普通の高校生であった陽子が、王として国を預かるのは並大抵のことではない。それを、他の二人の少女の苦悩・気付きと共に、丁寧に描かれています。高官たちの官僚的なエピソード、重税にあえぐ民たちを間近に見る陽子のさらなる成長が、とにかく素晴らしい。上巻で丁寧にストーリーを描きだし、下巻で疾走するのは、小野不由美の特徴でしょうか。時間があっという間に過ぎ、十二国記の世界に引き込まれてしまいます。
よみがな:せいしゅう
清秀
自分の不幸を語る鈴に対して、目の前で父親を妖獣に喰い殺された子供が言った言葉。辛いのはあんただけじゃないと諭すシーン
清秀
慶国から巧国、そして奏国へと国の荒廃のために逃れてきた難民の少年、清秀が、不幸に浸り抜け出そうとしない鈴に言った台詞
黄姑
梨耀から嫌がらせを受けていた鈴は、自分の不幸をすべて周りのせいにしていた。自分と状況が違う周りの人間に、自分の気持ちが分かるわけがないと決めつけ、相手の気持ちを分かろうとしない鈴に黄姑がかけた言葉。