人間って、不幸の競争をしてしまうわね。自分が一番可哀想だって思うのは、自分が一番幸せだって思うことと同じぐらい気持ちのいいことなのかもしれない。
祥瓊
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風の万里黎明の空下十二国記は、小野不由美の小説で、十二国記と呼称されるシリーズの中の作品の一つである。 風の万里黎明の空は上下2部作の作品となっており、主人公の陽子は日本で生まれた普通の女子高生だったが、ひょんなことから異界の慶国の女王となったところから始まる。だが、慶国で生まれたわけではない陽子に国の官は信用をせず、陽子は思い切って街に出て普通に暮らし始めることにする。また、芳国の王の娘として生まれたが父を殺されたことで、王宮を追い出された娘祥瓊は同じ年頃の女王だと噂の慶国の王を憎み、相手から王座を奪ってやろうと思い旅に出る。さらに陽子と同じく日本から異界にやってきた少女鈴もまた、慶を目指して旅に出ていた。3人の少女たちのそれぞれの活動がまじりあい、それぞれの運命を変えることになる大きな争いに巻き込まれることになる。また風の万里黎明の空は、十二国記シリーズの一環として、NHKによってテレビアニメ化が行われている。
上巻では、様々な理由で苦しむ三人の少女が描かれましたが下巻では身勝手さに気がついたり、置かれた立場での責任に思い至ったりと、それぞれの成長が見られます。特に、鈴と祥ケイの成長は、目を見張るものが。対して、現状に甘んじ、事なかれ主義(命がかかっているのだから当然かもしれませんが)の民衆と、義侠の勇士たちとの対比も。今の自分を変えることは、凄まじくエネルギーのいること。それを成し遂げた少女たちが出合い、さらに国を変えるうねりとなっていきます。上巻で紡いだ物語が、下巻で疾走するのは、小野不由美の特徴と言えます。時間があっという間に過ぎ、十二国記の世界に引き込まれてしまいます。物語のラスト、陽子の初勅には、こちらまで背筋を正さねばならぬような気持ちに。礼、ってそういうものだな、と本当に思います。
下巻に入ると祥瓊や鈴が上巻の時より成長しているのがよくわかります。二人は上巻の時点では気に障りますがだんだん好きになっていくと思います。そういえば上巻の感想に少女たちと書きましたが実年齢を考えると陽子以外当てはまらないんですよねぇ。オバサンやおばあさんといった年齢と気づくと少しショックを受けてしまいます。下巻の中盤に入ってきてようやく三人が出会う頃にはもう先が気になってページをめくる手が止まりません。最後の方まで反乱が成功するかわからないハラハラする展開で、陽子の王としての活躍の場もちゃんと用意されており、最後まで面白いです。個人的には最後の初勅を決める場面が好きです。
よみがな:しょうけい
祥瓊
主人公を含む、三人の訳ありな娘3人が、互いの状況や想いを語り合う場面。