ロードムービーのあらすじ・作品解説
この小説は辻村深月によって書かれたもので、講談社から刊行されている。これはメフィスト賞を受賞した辻村深月の初の短編集で、デビュー作「冷たい校舎の時は止まる」の登場人物を絡めた短編を3編収録している。2010年9月に講談社ノベルスから刊行されたと際に「トーキョー語り」と「街灯」が追加収録された。収録作品は「ロードムービー」(「esora」vol.5)、「道の先」(「esora」vol.5)、「雪の降る道」(「メフィスト」2005年1月号)、「トーキョー語り」(「メフィスト」2009年1月号)、「街灯」(書下ろし)である。 主な登場人物は、相澤東小学校5年生のトシ、ワタル、アカリ。「道の先」では、大手進学塾「明和学院」でバイトをしている大学生の俺、明和学園で先生いじめをしている中学3年生の大宮千晶。「トーキョー語り」では、さくら、水野篤志、遠山、久住薫子。「雪の降る道」では、ヒロ、みーちゃん(2人は幼馴染)。
ロードムービーの評価
ロードムービーの感想
不器用だけど、自分の歩き方を探す人の背中を押す本。
『冷たい校舎の時は止まる』のスピンオフ的な作品とのことですが、そちらは未見の状態で読みました。他の作品でもそうですが、辻村作品ではスピンオフ作品にもちゃんと独自の緊張感、世界観が貫かれていて、ぐっと入り込むことができます。個人的に「道の先」がいちばん好きな話でした。少女のあやうさ、教師と教え子という関係を少しはみ出しそうな危なっかしさを残しつつ、成長痛のような部分を丁寧に描いていて、地味なお話ですが、とてもじんわりくる物語でした。全体的に、主人公たちは「自分」と「他人」をとてもわけて考えていて、独立した存在としての自分をとても大事にしている、そう思いました。今の日本において、それはとても困難な選択だと思うのですが…そういう「あるきかた」を描く作家の筆力に、信頼感を持てる一冊です。
きれいな風景が目に浮かぶ。
5つの短編集で、小学生・中学生・高校生っていう、学生をキャラとして書いている小説。まさに青春っていうか、いつか一回はそんな悩みや葛藤があったよなって思わせる。「ロードムービー」と「雪の降る道」はちょっとミステリーっぽくってわかりやすい感じで描かれているんで、読んでいて楽しい。特に「ロードムービー」は一番私は読んでいて、考えさせられたし、最後のサプライズがいいと思う。2度目に読むのがまた違う気分で読める。最初の「街頭」はすごく短いんだけど、なんか、ぐっとくるものがあった。あと、情景の表現が綺麗。妄想でしかないんだけど、文章通りに膨らませるときれいな情景しか浮かんで来ない。それもいい。余計、この本にのめり込めるひとつの要因かなと思う。何かちょっとつまずいたり、苦しくなった時にこの本を読むと、自分の学生時代を思い起こしたりして、また頑張れる気がする。この感想を読む