遠い太鼓のあらすじ・作品解説
遠い太鼓は、講談社より刊行された、村上春樹の長編旅行エッセイである。このエッセイは、単行本版と文庫版が発売されている。タイトルはトルコの古謡から取られたもので、本書の先に発売された美術評論家の酒井忠康の作品のタイトルを、村上春樹が酒井忠康の了解を得たうえで同じタイトルを使用している。 この作品は、作者の村上春樹が「ノルウェイの森」や「ダンス・ダンス・ダンス」といった2つの長編を執筆していたころの、常駐旅行者としてギリシャやイタリアといったヨーロッパを転々と旅行していた3年間のことが描かれたエッセイである。その土地の人々との会話や、町での買い物や食事などの作者が体験した日常生活が描かれているが、純粋な旅行記としてというよりは、作者の個人的な楽しみやそのときの感情などを気の向くままに書き綴った日記のようなスタイルになっている。 村上春樹の旅エッセイは他にも「雨天炎天」、「辺境・近境」、「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」などの作品がある。
遠い太鼓の評価
遠い太鼓の感想
ぼやきばかりなのに、心を落ち着かせてくれる、海外長期滞在の記録。
著者が『ダンス・ダンス・ダンス』『ノルウェイの森』を執筆しているあいだ長期滞在したヨーロッパでのことを綴った旅行記。旅行記とはいえ、なので、記述のほとんどは生活にまつわる話題で、現地の名勝史跡を訪ねたり、珍しいものを食べたり、といったウキウキした旅行の様子はほとんどない。むしろ、はじめての土地で生活の基盤を整えたりするのに苦心惨憺するような場面がほとんどで、書かれている作家自身も、書いている作家自身も、とても疲れているようにみえる。そうう「ぼやき」の割合の高い本なのに、なぜか繰り返し読みたくなる中毒性がある。旅行に携え、長時間移動の折や、時差ボケ解消のための睡眠の間際に読み返すと、異郷におかれた自分をとてもすんなり受け入れさせてくれる本である。ぼやき、疲弊の合間に、素敵な宿との出会い、現地の食べ物のシンプルなすばらしさの記述などがあり、ほっとさせられる。ある意味、読み手の側が真に真似の...この感想を読む
旅とはとても身近で新鮮なもの
今話題の人気作家である村上春樹さんの作品ですね。分類的には旅行記かな。日本から遥か遠くにあるイタリアやギリシャで暮らした3年ほどの物語。普通の私たちのように観光地を周りホテルなどで過ごす日々とは異なり、彼の場合はアパートを借り、自炊し生活をした記録。もう日本にいるのとは変わんない感じで日常を過ごしているんですよね。買い物を市に行ったりちょっと外食に行ったりと、ほんと庶民的に、でもちょっとお国が違うのもアリ私たちにはちょっと新鮮な感じも与えてくれるかな。何気ない日常を過ごしているようでいろいろと驚かせてくれる出来事も多々あり、私たちに外国への憧れを与えてくれ、著者の書き方によって面白さを倍増させてくれています。日本から出たことのない方や海外に興味のある方はぜひ読んでみたらいかがでしょうか。そうすれば色々と何かを見いだせるかもしれませんし。きっと得られるものがあると思います。この感想を読む
秀逸な海外滞在エッセイ
村上春樹の作品は色々と読んでいますが、小説と同じくらい、エッセイも面白いのです。「遠い太鼓」は、村上氏が、イタリアやギリシャなどのヨーロッパに滞在していた時のエッセイ集です。かなり長い滞在だったようで、旅行記というよりは、生活日記というかんじです。タイトルが重厚な感じがしますし、かなり分厚い本なのですが、内容としては、さらっと軽く読めるような文章が多いです。寡黙なイメージのある村上氏ですが、現地の人と活発に交流していて、一種の旅行記としても、楽しめます。「ノルウエーの森」が爆発的に売れて、日本から出たくなった、というような記述も見られました。そうした背景もあわせ読んでみると、とても感慨深いものがあります。