今日という日は、残りの人生の最初の1日
チャールズ・ディードリッヒ
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公開当時、アメリカの静かな闇を巧みに描いていることで話題となったヒューマン映画、アメリカン・ビューティーはサム・メンデス監督により、中年の男性の心理を描いた作品である。 クセのある演技で定評かある俳優、ケヴィン・スペイシー演じる主人公は、中年の冴えない男。妻や娘にも馬鹿にされて、自分の家であるのにも関わらず、居場所をなくしていた。仮面家族のような一家、しかしティーンエイジャーの娘の友人に恋をしたことにより、彼は変化していく。 密かに彼女に想いを寄せながら、年甲斐もなく筋トレを始めたり、少年のように空想に更けることが多くなっていく。少女ながらも色気漂う彼女の一言一言に一喜一憂する中年男性と、崩壊に進む家族。 アメリカに華やかなイメージを抱き夢を見る者も多いが、この映画こそが真実のアメリカの姿であると言わしめた作品であり、始まりからラストまで正にアメリカの闇のビューティーを描いたヒューマンストーリーである。
この映画「アメリカン・ビューティ」は、20世紀が終わろうとしていた時に製作された、アメリカ社会やアメリカの家庭が抱えている闇や閉塞感、アメリカン・ドリームというものの終焉をシニカルに、なおかつ喜劇的に見つめたアイロニーに満ちた刺激的な作品です。 監督は演劇畑の舞台監督出身のサム・メンデスで、彼の映画監督としてのデビュー作で、撮影は今や「明日に向って撃て!」、「ロード・トゥ・パーディション」と本作で3度のアカデミー賞最優秀監督賞に輝く、伝説のカメラマンのコンラッド・L・ホール。 ごく普通の平凡なアメリカ市民として、ありきたりの普通の生活を送る事が、いかにストレスに満ち溢れているのかを、中産階級の家庭を中心に描いていて、リストラという厳しい現実にさらされる中年サラリーマンのレスター(ケヴィン・スペイシー)、何の取柄もない夫にうんざりしながら、自分の理想とするお洒落な生活を夢見て躍起になる妻キャロリン...この感想を読む
ケヴィン・スペイシーがこれでドンと有名になりましたね、会社員とか上役を演じると、これほど似合う役者も居ないと思います。大変良く興行収入が上がった作品、スピルバーグのドリームワークスはこれで大変利益が出て、ホクホクでありました。多くの評判を取り、賞も取った作品で、大変多くの人が見たと言うことは、これは馴染みの在る話で、人の心に納得できるモチーフが使われてるのでしょう。安寧の上に立つ家庭、収入が在ると言うことで辛うじて持っている家庭という器が、収入が無くなるというポイントでガラガラと壊れていくのです。父親を馬鹿にしている可愛げの無いティーンの娘、妻は体裁だけを考えて夫に対して感謝も何も無いという設定ですが、何処の家も似たり寄ったりの問題を抱えていませんか。そっとアナタの心に囁きかける、恐ろしい作品です。
アメリカン・ファミリーの夢と理想をぶっちぎりで打ち破ってくれた本作ですが、これでケヴィン・スペイシーを好きになった人は、私だけではないはずだ(笑)娘の同級生に入れあげ、あのてこのてで恋を成就させよう、ってんですが、カラダを鍛えたり、どうもその「努力」の方向性が妙なところに、劇場では失笑が起きてました。その、惚れられちゃったアンジェラの方の実像を織り込みながら、薔薇に埋もれた裸身を見せたり、妄想が爆発する映像を真顔でやってのける、イギリス風なシニカルな感覚が、映画の随所に光ります。お隣さんのフランク大佐の狂気の感じも、その説明のなさがゆえに、かえって怖い。笑いながら見た後で、はー…と笑いが醒める映画です。
チャールズ・ディードリッヒ
今日はいったい何なのかをよく教えてくれている一言
レスター・バーナム
レスターが最後に隣家の大佐に殺され、死の瞬間に人生を回想しながら語る台詞。
アンジェラ・ヘイズ
ジェーンがモデル志望の友達、アンジェラに「きっとモデルになれる」と言った後、アンジェラが確信したように言った台詞。